今回から「歩留まり」について解説するシリーズを始めます。量産において歩留まりは最も重要な要素の一つです。そして、プロセスエンジニアにとって、歩留まり改善は重要な仕事の一つでもあります。本シリーズでは、歩留まり低下の発生から要因特定、対策、再発防止までを追っていきます。
半導体の製造工程では、成膜、リソグラフィ、エッチング、検査といった工程を経て、ウエハー上に多数のチップが作り込まれます。この一連の工程を経て、最終的に良品として出荷できるチップの割合を「歩留まり」と呼びます。半導体エンジニア、なかでもプロセスエンジニアの重要な仕事の一つが、この歩留まりを改善することです。
ただし、歩留まり改善と聞くと、歩留まりのグラフを眺めて原因を突き止める、といった単純な作業をイメージするかもしれません。実際の量産現場では、歩留まりのデータだけを見て原因が分かることはほとんどありません。
歩留まり改善は、製品の設計情報、プロセス条件、設備の状態、使用した材料、計測データ、そして過去の製造履歴まで、複数の情報を組み合わせながら原因を絞り込んでいく活動です。
この記事は、量産ラインで歩留まり低下が発生してから、真因を特定し、対策を定着させ、再発を防ぐまでを追うシリーズの第1回です。今回は、歩留まり低下の兆候をどのように捉え、Wafer Mapや不良モードの分類から、優先して調べる不良をどう見極めるのかを取り上げます。実際にどのようなデータを、どのような順番で確認していくのか、一つの説明用事例を通じて見ていきます。
歩留まり改善では、データ解析に加え、製品や設備、材料などの情報を組み合わせた調査が必要です。この章では歩留まり改善の全体像を紹介します。
半導体の歩留まり改善は、歩留まりの数値そのものを解析する仕事だと思われがちですが、実際にはそれだけでは完結しません。歩留まりが低下したとき、プロセスエンジニアは複数の情報を横断的に確認しながら原因を絞り込んでいきます。具体的に確認するのは、次のような情報です。
これは、歩留まりの低下という一つの結果に対して、原因になり得る要素があまりに多いためです。プロセス条件のわずかなずれ、設備の経時変化、材料ロットの違い、計測誤差など、どれもが原因候補になり得ます。そのため、歩留まりのデータ単体を眺めるのではなく、関連するさまざまな情報と突き合わせながら、可能性を一つずつ絞り込んでいく必要があります。
歩留まりというと、最終的に良品として出荷できた製品の割合、つまり最終良品率のイメージが強いかもしれません。しかし、量産現場でのプロセスエンジニアの仕事は、最終良品率が下がってから動き出すわけではありません。
工程の途中で行うInline(インライン)計測や、欠陥検査、電気特性のデータなど、最終良品率が出る前の段階でも、異常の兆候はさまざまな形で現れます。むしろ、最終良品率という結果だけを見て動き出すのでは対応が遅れてしまうため、工程途中の兆候情報と組み合わせて捉える視点が欠かせません。この視点が、後述する異常の早期発見にもつながっていきます。
ここから先は、歩留まり低下が発生してから対策が定着するまでの流れを、一つの説明用事例に沿って追っていきます。なお、この事例は、イメージしやすくするために、実際の経験をもとに一般化・再構成したものです。特定の現場の実例をそのまま紹介するものではありません。
シリーズでは、異常の兆候を捉えるところから、調査対象の絞り込み、原因候補の検証、真因の特定、対策と量産への定着までを段階的に追っていきます。今回は、ある量産製品で確認された歩留まり低下の兆候から、優先して調べる不良を見極めるまでを取り上げます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
記事ランキング
コーナーリンク