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日本TI、DLP方式のプロジェクターはLCD方式に比べて長時間動作での画質劣化が少ないと主張

» 2003年05月27日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)はDLP(digital light processing)技術の動向について報道機関向けの説明会を開催し、DLP方式プロジェクターとLCD(liquid crystal display)方式プロジェクターの画質安定性を比較した実験結果を公表した。その実験結果から、プロジェクターを長時間動作させたときの画質は、LCD方式に比べてDLP方式が安定していると主張した。

 DLP方式プロジェクターは、米テキサス・インスツルメンツ社(米TI)が開発したDMD(digital mirror device)を光変調器として使用するプロジェクターである。DMDは、独立して動作可能な10数μm角のミラー(マイクロミラー)を数多く集積した半導体である。光源からDMDに入射した光を、画像信号に応じてマイクロミラーでオン/オフする。一方、LCD方式プロジェクターは液晶パネル(LCDパネル)を光変調器に利用する。光源からの光をプリズムで赤・緑・青に分け、対応する3つの液晶パネルに入射する。液晶パネルは画像信号に応じて入射光をオン/オフする。

 今回日本TIが公表したのは、米TI社の依頼で米ロチェスター工科大学(Rochester Institute of Technology)のマンセル色彩科学研究所(Munsell Color Science Laboratory)が実施した実験の結果である。市販のプロジェクターの中から、DLP方式2機種とLCD方式5機種を選んで比較した。これら7機種のプロジェクターを4700時間連続動作させ、投射画質の変化を計測した。画質は主に次の7項目で評価した。1)輝度、2)全画面と全オン対全オフのコントラスト、3)ANSI規格が定めるコントラスト、4)均一性、5)赤・緑・青各色について全画面のコントラスト、6)赤・緑・青各色についてANSI規格が定めるコントラスト、7)白・赤・緑・青の色度である。

図1 DLP方式プロジェクター投射画面の変化 図1 DLP方式プロジェクター投射画面の変化 テスト開始後24時間経過後の画面(中央上)。DLP方式のプロジェクター2機種(DLP1およびDLP2)の投射画面は、3312時間経過時も同等の画質を維持している(左下および右下)。

 その結果DLP方式プロジェクターでは、3312時間経過後も画質の低下がなかった(図1)。さらに4700時間経過後も同等の画質を維持したという。LCD方式プロジェクターでは、動作開始から1368時間で最初の劣化を確認した。さらに、3000時間を超えると投射画面全体が薄く黄変した(図2)。画面が黄変するのは、色調を構成する赤、緑、青の色信号のうち、青の色信号が欠落するためだ。これは、LCD方式が光変調器として使用する液晶パネルの劣化によるものである。このように長時間の投射を続けた場合、LCD方式プロジェクターではLCD光変調器が劣化し、画質が低下していた。「LCD光変調器の交換をプロジェクターのユーザーが行うことはできない。メーカーでの交換作業が必要になり、交換費用が高くつく」と米TI社は述べている。

図2 LCD方式プロジェクター投射画面の変化 図2 LCD方式プロジェクター投射画面の変化 ブロック・パターン画像(下側の画面)は2256時間経過時に薄く黄変している。3312時間経過時は黄変がさらに進んでいる。

 日本TIは、DLP方式プロジェクターでは長時間の投射を続けた場合も、光変調器による画質の低下が起こらないと説明した。光変調器による画質劣化は10万時間以上発生しないという。光変調器で画像を劣化させる原因になり得るのは、DMDで発生するヒンジ・メモリーと呼ばれる現象である。ヒンジ・メモリーとは、DMDのマイクロミラーを支持するヒンジが正常に動作しなくなることである。ヒンジが正常に動作しないと、マイクロミラーは対応する画素に画像の色情報を正しく投射できない。日本TIは、ヒンジ・メモリーが10万時間以上発生しないことを加速試験で確認したという。

 同社はDLP技術を用いた製品の動向についても触れた。例えば、DMDを搭載したDLP方式のテレビ受像機は低価格化が進むという。2002年に3000米ドル以上であったのが、2004年以降は2000〜3000米ドル程度まで下がると見る。同社が製造するDMDについても、テレビ受像機の低価格化に沿ったコスト・ダウンを進める考え。DMDチップの小型化や、より安価に製造できるパッケージの開発などにより、コスト・ダウンを図るという。

(薩川 格広)

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