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劣化した接点を復活させる「必殺技」Wired, Weird(1/2 ページ)

今回は壊れた部品を交換せずに接点を復活させる必殺技を紹介する。

» 2024年12月25日 10時00分 公開

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 電気機器の不良原因は電解コンデンサーが一番多い。次に多いのが接点の不良だ。

 接点不良は、代替の接点部品があれば交換して修理できる。しかし古い機器に使用された接点部品は代替がない場合が多い。部品が無ければ最悪の場合、修理できずに廃棄になる。今回は壊れた部品を交換せずに接点を復活させる必殺技を紹介する。

電気的に『磨く』!技を習得した経緯

 しかし、なぜ接点の接触が劣化するのだろうか。

 45年以上前の話になるが、筆者が担当した最初の仕事は防犯システムの端末機器の設計業務だった。工場やビル、家庭に張り巡らされたセンサーの動作を監視するポインターという名称で、センサーが感知した場所を表示する機器だった。防犯用センサーの設置環境は湿度も温度も厳しい場所が多く、ときには腐食性ガスの雰囲気での使用されるようなケースもあった。しかし防犯機器の性格上、誤動作は許されず365日、24時間、正常な動作が要求された。

 厳しい環境に耐えるために一番重要なことは、センサーの接点を劣化させないことだ。そして、仮に接点が劣化しても、何らかの方法で接点を復活させることが求められた。接点の劣化を防ぐ方法は接点に流す電流をしっかりと管理することだった。この防犯装置はセンサーラインに20mAの電流を流し、多数のセンサーを接続していた。20mAの電流を流せば接点の表面が劣化しにくい。その上、センサーが働いて元に戻る際に接点に断続電流を流し、センサーの接触抵抗を復活させていた。この技を使うことで、電気的に部品の接触抵抗を復活できた。

接点の腐食、かなり進んでいても...

 接点を復活させる様子を紹介する。まずはハンディライトの事例だ。写真を図1に示す。

<strong>図1:まず、このハンディライトの接点を復活させる。接点は左上のばねの下にある</strong> 図1:まず、このハンディライトの接点を復活させる。接点は左上のばねの下にある[クリックで拡大]

 図1のライトは友人から譲られたものだ。乾電池1本で明るく点灯し、光を調整できるレンズの付いた優れもののライトだった。接点は図1左上のバネの下にあるが、手の皮脂や汗、雨水が入り込みやすい構造だ。友人から『数年使っていたら、ライトが点いたり点かなかったりして、使えない状況になった』ということだった。友人からは修理できるかもしれないので『修理できたら使ってください』と渡された。普段使っている100均のライトに比べると質感があり、高級で使いやすいライトだった。

 このライトの修理は簡単だった。それは防犯用センサーの接点復活方法と同じで、接点で電流を入り切りすることだ。この接点はかなり腐食が進んでいるが、大きな電流で入り切りすれば良かった。

 手持ちの安定化電源の出力電流を最大の3Aに設定し、アルミケース側にマイナス電源、バネ側にプラス電源を接続して接点をオンオフさせた。当初の数回は電流が流れなかったが、5回オンオフさせると3Aの電流の断続が可能になった。さらに5回ほどオンオフさせて、接点の復活を完了させた。接点復活前と後の写真を図2に示す。

<strong>図2:接点復活前(左)と復活後(右)。ライトが点灯した</strong> 図2:接点復活前(左)と復活後(右)。ライトが点灯した[クリックで拡大]

 図2のようにハンディライトの接点は簡単に復活させられた。このライトの接点には大電流が流せたので簡単に復活したが、リレーやスイッチも同様の方法で復活させられる。しかし、接点のメッキや能力に応じて電流値を調整する必要がある。特にリードリレーなどの金メッキの接点では、大電流を流してしまうと金メッキそのものが剥げてしまう。

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