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インダクタンスの値を計測可能な簡易テスターDesign Ideas

» 2007年07月01日 00時00分 公開
[Al Dutcher(コンサルティングエンジニア),EDN]

 本稿では、高価な専用計測器を使うことなく、インダクタンスの値を簡単かつ素早く計測可能な簡易テスターを紹介する。その用途としては、インダクタの特性を実測して設計値と照合したり、部品箱に貯まった素性が不明のインダクタの値を確認したりすることが挙げられる。

 図1に示したのは、主として電源回路用のインダクタやRF回路用のインダクタの計測を対象として設計した回路である。この回路は、2個のエミッタ接地トランジスタアンプをカスケード接続した構造を成している。各トランジスタは入出力がクロス接続されているため、非飽和状態のフリップフロップ動作をする。各トランジスタではベース入力とコレクタ出力の位相が反転するが、カスケード接続された回路では正帰還増幅となる。計測の対象とするインダクタLが接続されていない場合には、回路の出力はバイステーブル(2安定状態)のいずれかの状態で安定する。インダクタが挿入されると、DC成分は増幅されず、AC成分のみが増幅される。その結果、回路は安定発振状態となる。この発振周波数/周期を周波数カウンタまたはオシロスコープで計測し、インダクタの値を求める。

図1 インダクタンスの計測用回路 図1 インダクタンスの計測用回路 この回路の発振周波数は、計測の対象となるインダクタンスの逆数に比例する。2個のトランジスタとわずかな受動部品で構成できるので、簡単かつ安価である。

 トランジスタを非飽和動作(能動領域)に維持することにより、回路の動作速度がアップする。使用するトランジスタとしては、高速/小信号用のRFトランジスタならばどのようなタイプでも必要なスイッチング速度が得られる。低速なトランジスタも使用できるが、その場合には計測可能なインダクタンスの下限値が大きくなり、計測可能範囲が狭くなる。

 図2に示すのは、値が約100μHのインダクタを挿入した場合の出力波形である。一般式としての発振周波数は、対象とするインダクタンスL、抵抗R(図1の場合、2個の抵抗RLとRRで決まる)で表せる時定数L/Rに依存する。図1の回路図の場合、出力波形の周期はインダクタンスの値に比例する。この周期の1/2をTHALFとすると、THALF=L/100が近似的に成り立つ。THALFは発振波形の1周期TFULLの半分なので、TFULL=L/50となり、この式からインダクタンスL=50×TFULLが求まる。

 周期ではなく周波数を計測する場合には、発振周波数fOSCがインダクタンスLの逆数に比例することから、L=50/fOSCとなる。

図2 回路の出力波形 図2 回路の出力波形 この出力波形はインダクタンスが約100μHの場合の例である。

 この回路のスイッチング速度は約10nsなので、計測可能なインダクタンスの下限値は約1μHである。これより小さい値を計測するには、まず対象とするインダクタを下限値より大きいインダクタに直列接続して計測する。次にダミーのインダクタだけを接続して計測を行う。このようにして得られた2つの計測結果の差分から計測対象のインダクタの値を求めればよい。

 一方、測定可能なインダクタンスの上限値はない。ただし、インダクタのESR(equivalent series resistance:等価直列抵抗)が70Ωを超えるくらいになると、発振動作が停止してバイステーブル動作になるので計測不能となる。

 この回路を使用して、トランス巻線のインダクタンスを計測することも可能である。ただし、トランスが低周波用の小型/鉄製コアの場合にはESRが大きくなるため計測できない。良好な精度を得るには、発振周波数の計測に、入力容量の小さい周波数カウンタ/オシロスコープを使用する必要がある。

 回路の電源は、1個のニッカド(NiCd)電池またはニッケル水素(NiMH)電池でよい。これらの電池は、使用時間に依存した電圧変化が小さいため、計測精度が低下する心配が少ない。動作時の消費電流は約6mAである。

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