−48V系の電源は、無線基地局や中央交換局における公衆通信装置などで広く使用されている。その値は、実際には−60V〜−48Vの範囲で変化する。この種の電源の電流を計測するための回路には、通常±15Vの電源が必要となる。この正負両電源から負電源を不要にできれば、装置の複雑さが緩和でき、コストも低減可能になる。本稿では、−60V〜−48Vの電源ラインに対応した単電源(正電源)動作の電流計測回路を紹介する。
−48V系の電源は、無線基地局や中央交換局における公衆通信装置などで広く使用されている。その値は、実際には−60V〜−48Vの範囲で変化する。この種の電源の電流を計測するための回路には、通常±15Vの電源が必要となる。この正負両電源から負電源を不要にできれば、装置の複雑さが緩和でき、コストも低減可能になる。本稿では、−60V〜−48Vの電源ラインに対応した単電源(正電源)動作の電流計測回路を紹介する(図1)。
この回路の中心にあるのは、差動アンプIC1(米Analog Devices社製の「AD629」*1))とオペアンプIC2(同「AD8603」*2))である。差動アンプとしてAD629を使用した場合、計測の対象とできる電圧(コモンモード電圧)の範囲は次式を用いて求めることができる。
VCOM_MAX=20×(VS−1.2)−19×VREF
VCOM_MIN=20×(−VS+1.2)−19×VREF
例えば、基準電圧VREFが5Vの場合、許容電圧範囲は−71V〜121Vになる。
回路の動作としては、まず電流Iにより、シャント抵抗RSに生じる電圧が差動アンプIC1に入力される。IC1のゲインは1に固定されているので、この入力に対する出力はI×RS+VREFになる。この出力を受けるIC2が減算器として働くことにより、コモンモード電圧とVREFの成分が除去され、その結果、I×RSが増幅されて出力となる。IC2のゲインを20とすると、出力信号がこの例のA-Dコンバータの入力範囲である2.5Vに整合するレベルとなる。
IC2としてAD8603を使用した理由は、バイアス電流、オフセットドリフトが小さいことである。また、レールツーレール出力が得られるため、A-Dコンバータと同一電源を使用できる。
この回路の計測誤差は、IC1、IC2のオフセット、入力バイアス電流、減算器部分の抵抗誤差によって生じるが、AD8603(IC2)の出力においては最大163mVとなる。この値は、減算器における抵抗誤差を0.01%とした場合の計算値である。回路全体の動作は、シャント抵抗RSが50mΩ、100mΩ、200mΩの場合に対して確認した。
※1…"High Common-Mode Voltage, Difference Amplifier AD629," Analog Devices, 1999 to 2007.
※2…"Precision Micropower, Low Noise CMOS Rail-to-Rail Input/Output Operational Amplifiers AD8603/AD8607/AD8609," Analog Devices, 2005.
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