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テレビ受信機のハイブリッド化デジタル/アナログ、地上波/ケーブルへの対応策を探る(1/2 ページ)

デジタルテレビの普及が急速に進んでいる。しかし、まだアナログテレビが姿を消したわけではない。そのため、アナログ/デジタルのハイブリッドシステムを設計する必要に迫られるケースも多いはずだ。本稿では、テレビ受信機をアナログ/デジタル、地上波/ケーブルのすべてに効率良く対応させるための1つのアプローチを示す。

» 2008年08月01日 00時00分 公開
[Brian D Mathews(米Xceive社),EDN]

アナログテレビの信号処理回路

 アナログテレビは急速に姿を消しつつある。しかしながら、今後もしばらくはアナログテレビ受信機の存在を意識しながら開発を進めなければならない状況が続くだろう。世界のほとんどの地域で、アナログテレビの生産が終了するのはまだ先のことになりそうだからである。また、アナログテレビ信号を伝送するケーブル放送システムの製造も続くかもしれない。スマートテレビ、セットトップボックス、PVR(personal video recorder)/DVR(digital video recorder)などを開発するメーカーは、今後もしばらくはデジタルテレビの中にアナログ受信機を内蔵する予定だ。

 こうした背景から、本稿ではデジタル放送とアナログ放送の両方を受信できるハイブリッドテレビ受信機について解説する。その上での前提になることとして、まずはテレビのフロントエンド信号処理回路について、その進化の過程を振り返ってみよう。

 アナログテレビの基本的な機能は、地上アナログ放送のアナログRF(無線周波数)信号を受信して、良質な映像を再生することである。これ自体は、さほど難しいことではない。なぜなら、AM(振幅変調)を利用したアナログRFテレビ信号の再生に要求されるノイズ特性、直線性、位相ノイズ特性、利得、AGC(自動利得制御)応答、周波数安定性はそれほど厳しいものではないからである。

 アナログテレビ受信機では、古くからのヘテロダイン方式で信号処理を行う(図1)。まず、入力RF信号をフィルタリングして増幅し、ミキサーに送る。ミキサーはRF信号をIF(中間周波数)信号に周波数変換し、その出力信号をさらにフィルタリング/増幅してからアナログ復調器に送る。

 アナログテレビ製品をケーブル放送に対応したものにするには、上記の構成における基本的な要求性能を見直さなければならない。地上アナログ放送の信号は、ケーブル放送のアナログ信号とはかなり異なるからだ。

図1 アナログテレビ受信機の信号処理回路 図1 アナログテレビ受信機の信号処理回路

 米国では、FCC(米国連邦通信委員会)が各テレビ放送局に送信周波数帯域を割り当てている。地域ごとに周波数を割り当てることで、隣接するチャンネルに強い信号が存在しないようになっている。これにより、テレビ受信機が、視聴者の家に最も近い対象チャンネルを検出できるようになっている。従来のアナログテレビ受信機では、近接する周波数からの干渉を容易に除去することはできない。このため、FCCは、強い信号の周波数が近接しないように、各放送局の送信機のチャンネルを設定しているのである。所望の信号が弱く、隣接するチャンネルに強い信号が存在すると、既存のどの受信機も、その弱い信号をうまく受信することはできないだろう。

 テレビが受信する地上アナログ放送の信号スペクトルは、多くの歯が欠けた「櫛(くし)」のように、それぞれの周波数帯域が分離されて割り当てられている。また、送信機からの信号強度のレベルや受信機までの距離はさまざまなので、受信時の信号強度のレベルは大きく異なる。テレビ受信機は、近くにある送信機からの信号と、遠くの送信機からの信号の両方を受信できる必要がある。信号強度にミリワットからマイクロワットと3桁近くもの幅があるような場合、つまり、歯と歯の間にすき間があり、歯の長さもまちまちな櫛に例えることができるような状態で、所望の信号を抜き取って再生しなければならないのである。

ケーブル放送への対応

 一方、ケーブル放送の信号スペクトルは近接しており、強度もほぼ等しい。つまりは、買ったばかりの櫛のような状態である。ケーブル放送の事業者としては、できる限り多くのチャンネルを提供するために、利用可能な周波数の全域を使用したい。また、ケーブル放送では、ケーブル自体が外部干渉からのシールドとしての役割を果たすことに加え、1台の送信機によって信号を発生させるので、信号強度のレベルを制御することができる。このため、隣接するチャンネルの信号のほうが強いことはないので、買ったばかりの櫛のような状態でも構わないのである。

 逆に、通常のアナログテレビをケーブル対応にするには、近接して配置されたレベルの等しい信号を処理できて、しかも多チャンネルに対応できるようにする必要がある。このような信号を扱うRF受信機は、地上アナログ放送の受信機よりも直線性が優れていなければならない。

 RF受信機の直線性は、一般に1dB利得圧縮と3次インターセプトポイントで規定される。一方、ケーブル放送のシステムには多くのチャンネルが存在するため、テレビ業界は独自のパラメータを作成した。受信機の相互変調に対する耐性を規定するためのCSO(composite second order beat:複合2次歪)とCTB(composite triple order beat:複合3次歪)である。ケーブル放送に対応するテレビ受信機の仕様には、これらが含まれている。

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