2009年9月、欧米で好評を博した薄膜太陽電池のビジネスサミット「Thin Film Solar Summit」が日本に上陸。2〜3日の2日間、東京都港区で「Thin Film Solar Summit Japan 2009」が開催され、薄膜太陽電池の製造メーカー各社やアナリストらが講演を行った。本稿では、ホンダソルテック 数佐 明男氏と三洋電機 田中 誠氏の講演内容をお伝えする。
昨今のシリコン価格上昇により、(結晶系太陽電池と比較して)原材料が低コストに抑えられる薄膜太陽電池事業への参入企業が増えている。しかし、太陽電池導入の際に重要な指針の1つとなる発電効率の面で見ると、薄膜太陽電池は現在市場で主流の結晶系太陽電池よりも低く、今後、技術面での補いや持続可能なビジネスモデルの構築が重要となる。
2009年9月2〜3日の2日間行われた「Thin Film Solar Summit Japan 2009」では、シャープ、カネカなど日本の薄膜太陽電池メーカー数社が集い、各社ビジネスモデルや開発動向を発表。本稿では、自動車メーカーとして初めて太陽電池事業に参入し、CIGS太陽電池の量産を行うホンダソルティック 数佐 明男氏と、研究レベルで世界最高効率23.0%を実証したHIT太陽電池など、独自の技術力を強みとする三洋電機 田中 誠氏の講演内容を紹介する。
世界初の2足歩行ロボット「ASIMO」や燃料電池乗用車「FCX」を世に送り出してきたホンダは、2006年12月に太陽電池事業への本格参入を発表した。「なぜ自動車メーカーのホンダが?」と思われた方も多いことだろう。
その理由についてホンダソルテック代表取締役社長の数佐 明男氏は「いくらCO2ゼロのエコカーとうたっていても、塗装、溶接など車を作る過程ではエネルギーを消費せざるを得ない。それならばクリーンなエネルギーを作る商品を開発し、自動車/二輪車の製造時に消費するエネルギーをオフセットしたいという想いがあった。すでに販売を開始している家庭用コージェネレーションユニットや太陽電池に加え、将来的には水素ステーション(プロトタイプはすでにできている)などの融合商品も展開していきたい」と語る。
太陽電池は、大きく分けて結晶系と第2世代と呼ばれる薄膜系に分類される(画像2を参照)。ホンダが製造・販売しているのは薄膜系の中でも、材料に化合物を使用しているCIGS太陽電池だ。
「化合物(CIGS)系の薄膜太陽電池は、簡単な工程で作ることができ、低コスト、高温時に変換効率が落ちにくいという特徴がある。シリコンを使用していないという点で変換効率が多結晶シリコン太陽電池よりも若干落ちているが、まだ開発されて間もない技術ということで、今後伸びる可能性は十分にある。試験的には19%ほどの効率が実証されている」(数佐氏)
CIGS太陽電池は、生産が確立されていない状態でも10%以上の効率を確保している。数佐氏は「今後、作れば作るほどコストは下がる」とし、コストと性能のポテンシャルの高さが同太陽電池を選択した最大の理由だと述べた。
太陽電池事業に参入するに当たり同社がビジネスモデルの筆頭として掲げたのは、これまで自動車技術で培ってきた品質管理だった。
「安心して使ってもらえる商品であるために外せないのは、保障体制の充実。ユーザーが納得できる商談、分かりやすい工事、将来にわたり安心のできるアフターマーケット体制を築いていく必要がある。そのために販売店の条件として、国家試験を取得している建築士であるかなどを重視している」(数佐氏)
なお、同社は現在、国内向けにのみ販売を行っているが、「今後は海外市場も中長期的に視野に入れながら現地のインフラ、市場に合わせた提供を行っていきたい」(数佐氏)とした。
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