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三洋電機が自動車用電池の事業戦略を披露、PHEV用Li電池を2011年に量産

» 2009年11月18日 17時37分 公開
[EDN]

 三洋電機は2009年10月、自動車用電池に関するフォーラムを開催、ハイブリッド車(HEV)やバッテリ電気自動車(BEV)など、環境対応車用電池の事業戦略や開発計画などを明らかにした。


写真1 三洋電機の本間充氏 写真1 三洋電機の本間充氏 

 現在、日本では、排出される二酸化炭素(CO2)の約20%が車によるものだと言われている。三洋電機取締役副社長の本間充氏(写真1)は、「環境対応車に切り替えることによって、CO2を大きく削減できるはずだ」と強調する。現状では、走行距離1km当たりのCO2総排出量(g-CO2/km)は、ガソリン車が193、ディーゼル車が146、HEV(ガソリン/電気のハイブリッド車)が123、プラグインHEV(PHEV)が60、BEVが49、そして燃料電池車(FCV)が86.8となっている。最近は、トヨタ自動車の「プリウス」、 本田技研工業の「インサイト」と低価格のハイブリッド車の売れ行きが好調なほか、BEVの量産発表が相次いでいる。米国を中心に開発が進むPHEVは、「日本でも普及する可能性は十分にある」(本間氏)。ただ、FCVについてはインフラの整備、コスト、耐久性といった面で課題が多く、実用化にはほど遠いのが現状だ。こうした状況から、「今のところ、やはりHEV/PHEVが本命だと言える」(本間氏)という。また、本間氏は環境対応車の需要について、「2020年には乗用車が世界中で1億台を越え、そのうち1100万〜1200万台が環境対応車となるだろう」とし、「電池の市場は将来的に2兆〜2兆5000億円くらいに膨れ上がると予想される」と述べた。

 三洋電機は、2004年に第1世代のHEV用ニッケル水素電池(以下、NiH電池)を発表、2009年には第2世代の量産を開始した。第2世代は、第1世代に比べて出力性能は1.3倍、耐久性能は2倍に向上している。これらの性能は、同社の「焼結(しょうけつ)式正極技術」や「超格子水素吸蔵合金負極技術」によって実現された。

 現在は、第2世代よりもさらに改良を重ねた第3世代の開発を進めている。第3世代では、特に、NiH電池に固有の課題である容量低下を抑えることに重点を置いている。すでに開発のめどは立っており、2013年には量産を開始する予定である。第3世代で構成したシステムは、システム出力当たりの重量と体積が、第1世代に比べてそれぞれ58%まで低減されるという。

 HEV用リチウムイオン電池(以下、Li電池)については、「出力密度や回生密度、安全性、耐性、コストなどのバランスが取れていることが強みだ」(三洋電機)という。出力密度は3500W/kg、回生密度は3300W/kgを実現しており、寿命は10〜15年である。また、開発中のPHEV用Li電池については、20Ah(アンペアアワー)級の容量で安全性を確認しているという。これは、HEV用Li電池の約4倍の容量となる。現在は、PHEV用Li電池の開発を2011年の量産に向けて加速しているほか、BEV用Li電池も開発中である。

 本間氏は、今後の事業戦略として、パートナーシップの強化、PHEV用Li電池などの開発の加速、量産体制の強化、グローバルサプライチェーンにおける競争力の強化、という4本柱を提示した。HEV用Li電池については、2009年3月に導入した徳島工場の1号ラインに加えて、2010年に加西事業所に2号ラインを導入する。2010年8月には1号ラインで月産10万台、2号ラインで月産100万台を目指す。また、同年の後半には、PHEV向けに大容量のLi電池を生産する3号ラインも導入、月産30万〜40万台を供給する予定だ。さらに、2015年までには月産1000万台の供給体制を整えたいとしており、2008〜2015年までの累計投資額として約800億円を計上している。NiH電池についても、加西事業所に生産工程を新設し、追加で量産を行う。2009年末には月産300万台の体制を整え、2010年1月より新体制で供給を開始していく予定だ。

 なお、海外での製造体制については、2012年より電池パックの組み立てを徐々に現地化していくという。

(村尾 麻悠子)

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