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BMUを小型化するアイソレータ、2つの絶縁機能を1パッケージに

» 2010年04月01日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 米Analog Devices(ADI)社は2010年2月、データと電源の絶縁機能を1パッケージに集積した4チャンネルのアイソレータIC「ADuM540xW」を発表した。主に車載2次電池モジュールの制御回路の用途に向ける。1万個購入時の単価は5.75米ドル。

 ADuM540xWは、デジタル信号の伝送について絶縁を行う技術「iCoupler」と、電力の伝送について絶縁を行う技術「isoPower」を採用している。いずれもADI社の独自技術であり、厚さ20μmのポリイミド絶縁体を2個のマイクロトランスで挟み込んだ絶縁構造を利用することを特徴としている。

 iCouplerは、入力側のエンコーダ回路、マイクロトランスを用いた絶縁部、出力側のデコーダ回路から構成される。入力されたデジタル信号は、エンコーダにより信号の立ち上がりを2パルス、降下を1パルスの信号として変換される。そして、このパルス信号は、絶縁部を経由したデコーダに伝送され、デコーダでデジタル信号として復元される仕組みである。

 一方、isoPowerは、スイッチ、マイクロトランスを用いた絶縁部、整流器/フィルタ、レギュレータから構成される。入力された電圧は、スイッチによって電圧変換が行われる。その後、マイクロトランスを用いた絶縁部を経由して、電磁誘導により電力が伝送される。レギュレータは、この伝送された電力の出力電圧を一定の値(ADuM540xWの場合は5V)に制御するためのものである。

写真1「ADuM540xW」のパッケージ内の構成 写真1 「ADuM540xW」のパッケージ内の構成 

 iCouplerとisoPowerを採用しているADuM540xWでは、デジタル信号の絶縁を行うダイと電力の絶縁を行うダイ、デジタル信号と電力の入力部を1つにまとめたダイ、出力部を1つにまとめたダイ、合計4つのダイが1パッケージに収められている(写真1)。パッケージは16端子のSOICで、サイズは10mm角。

 ADI社が、ADuM540xWを利用するのに最も適した用途として提案しているのが、車載2次電池モジュールの制御を行う2次電池管理ユニット(BMU)の絶縁である。ADI社は、「ハイブリッド車や電気自動車の車載2次電池モジュールの出力電圧は数百Vに達すると言われている。その制御を行うBMUの電源電圧は、車載2次電池モジュールから供給することになる。その一方で、高電圧を持つ車載2次電池モジュールとBMUは、電気的に絶縁されている必要もある。ADuM540xWは、デジタル信号と電力の伝送に対する2つの絶縁を1パッケージで実現することにより、BMUの大幅な小型化に貢献できる」としている。

 同社によれば、一般的な絶縁型DC-DCコンバータと4チャンネル分のフォトカプラによって構成する絶縁回路を、ADuM540xWで置き換えることにより、基板上の実装面積を約70%削減できるという。加えて、部品コストと消費電力についても、それぞれ50%低減することが可能である。

 ADuM540xWの課題は、電力の伝送効率が低いことだ。一般的な鉄心を用いたトランスでは電力の伝送効率が70〜80%であるのに対して、鉄心を持たない空心トランスを利用するADuM540xWは35%と低い効率にとどまる。ただし、「電力の伝送効率が低いことは確かだが、それ以上に小型化のメリットを高く評価してもらえると考えている。また、iCouplerを用いたアイソレータは、フォトカプラと比べて消費電力が1/10程度なので、ADuM540xWトータルで見れば消費電力は十分低減できていると考えている」(ADI社)という。

 今後同社では、すでに量産車に搭載されているiCouplerベースのアイソレータの実績を基に、ADuM540xWの採用につないでいく方針だ。

(朴 尚洙)

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