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» 2012年01月27日 20時58分 公開

2012年期待のエレクトロニクス技術(近未来ガジェット編)EDN/EE Times編集部が展望する(2/4 ページ)

[EDN]

もうSFとは言わせない、体内埋め込みデバイスが実用化へ

 Appleの「iPhone」や「iPad」、RIM(Research In Motion)の「Blackberry」といったモバイル製品の普及とともに、プロセスやアーキテクチャの進化によって、回路の小型化、高集積化、低消費電力化、そして大幅な低コスト化が進んだ。モバイル機器の革新を担った半導体技術は、新たに体内埋め込み型医療機器に応用されようとしており、医療の世界で不可能だと思われていたことが現実のものになろうとしている。

 Cactus Semiconductorは、神経刺激、ペースメーカー、除細動、超音波、医療モニタリング(グルコース測定など)といった機能を持つ、体内埋め込み型や携帯型の医療機器向けにICを開発している。外部コントローラで操作可能な体内埋め込み型医療機器向けICも手掛ける他、Freescale Semiconductorと提携して医療機器市場向けのSoC(System on Chip)の開発にも注力する。同社のような企業の革新的な技術によって、体内埋め込み型医療機器市場の様相は一変するだろう。

 Plessey Semiconductorsは2011年10月、EPIC(Electric Potential Integrated Circuit)センサーのサンプル出荷を開始したと発表した。EPICセンサーは、服の上からや壁越しでも電場の変化を検知することができる。同製品は非接触の心電図(ECG:Electrocardiogram)用センサーとして最適化されたもので、従来と同等またはそれ以上の電極性能を実現しているという。脳活動や脊髄活動などに伴う電気信号を正確に測定できるようになる日も近いかもしれない(図1)。

図1 心電計用のPlessey社製EPICセンサー(提供:Plessey Semiconductors) 図1 心電計用のPlessey社製EPICセンサー(提供:Plessey Semiconductors)

 Medtronicが開発しているのは、神経系からの信号を長期間にわたって検知し、そのデータを加工して遠隔送信する技術だ。同技術を用いて、病気の進行や、病気が患者に与える影響などを分析する試みが進んでいる。将来的には、新たな分野での臨床応用が期待されており、運動性疾患やてんかん、精神疾患といったさまざまな病気の進行や、それらの治療の経過観察に改善をもたらす可能性がある。

 神経ダイナミクスに対する理解が進んだことで、体内埋め込み型センサーや信号分類技術を用いて検討した最適な治療を、その効果をリアルタイムで確認しながら患者に施せるようになるかもしれない。そうなれば、治療における医師と患者双方の負担を軽減できる可能性がある。また、滴定量を調節する機能を備えた体内埋め込み型装置の寿命を延ばすことにもつながるだろう。さらに、定量的な生理学的指標に基づく治療が可能になるので、患者へのより高い治療効果の実現も期待できる。

 神経信号から脳の状態に関する情報を直接得るためには、神経インタフェース(NI)技術が必要だが、これはブレインマシンインタフェース(BMI:Brain Machine Interface)の中で実現される。一般的にBMIは、「被験者の意思を感知して解読するシステム」と定義される。双方向BMIには、神経系にフィードバックする手段が含まれる。

図2 双方向BMIシステムの実例(提供:IOP Publishing) 図2 双方向BMIシステムの実例(提供:IOP Publishing)

 図2は、人体に長期間使用することを許可されている最先端の医療技術を用いて試作された、完全体内埋め込み型システムである。図の右側は、センサーとアルゴリズムを組み込んだハイブリッド基板の拡大図だ。写真には表示されていないが、裏面には刺激回路(電気刺激を与える回路)と伝送回路を搭載している。

 ジョージア工科大学 材料科学工学部教授のZhong Lin Wang氏は、「圧電ナノワイヤアレイを用いれば、ナノ発電素子によってナノレベルの力学的エネルギーを電気エネルギーに変換できる」という研究成果を発表した。保守点検が不要、かつ連続的に稼働することが求められる体内埋め込み型バイオセンサーには、このような電源が不可欠になる。

 また、発電機能を内蔵した体内埋め込み機器であれば、外部から給電しなくても、多くの機能を備えたナノ装置群を制御/操作することも可能になるだろう。

 Lungpacer MedicalのAndy Hoffer氏のグループは、侵襲性が非常に低い医療技術の開発を手掛けている。横隔神経を電気的に刺激して、横隔膜の強さや、疲労に対する耐性を維持する。そして、人工呼吸器を装着した患者が徐々に自発呼吸に戻れるようにするという技術だ。外科手術で体内に埋め込む場合と比べて、局所麻酔を使って注射針を皮膚に刺して横隔神経を刺激するだけで済むというメリットがある。

(Steve Taranovich:Contributing Editor, EDN)

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