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ESD/イミュニティ試験の基礎をつかむデバイスレベルとシステムレベルで異なる(3/4 ページ)

» 2012年02月14日 14時45分 公開
[Dwight Byrd/Thomas Kugelstadt(Texas Instruments),EDN]

システムレベル試験

 ここからは機器単体を対象とするシステムレベル試験について説明する。機器に対するESDの影響を最も正確に計測できると言われているESDイミュニティ試験の他に、代表的なイミュニティ(耐性)試験であるモーターやインバータなどのスイッチング動作の影響を計測するEFTイミュニティ試験と、雷の影響を計測するサージイミュニティ試験も紹介しよう。

■ESDイミュニティ試験

図7 ESDイミュニティ試験に使用する単発パルスの波形 図7 ESDイミュニティ試験に使用する単発パルスの波形
図8 ESDイミュニティ試験のイメージ 図8 ESDイミュニティ試験のイメージ 試験では単発パルスを正極性と負極性で10回ずつ印加する。
図9 ESDイミュニティ試験とデバイスレベル試験の比較 図9 ESDイミュニティ試験とデバイスレベル試験の比較 ESDイミュニティ試験は、電圧がCDM試験の8倍、電流はHBM試験の20倍となっている。

 ESDイミュニティ試験では、先述したHDM試験と同様に人体からのESDを模擬する。人が湿度の低い環境に居たり、導電率の低いカーペット上を歩いたり、化学繊維製の衣服を着用していたりする場合、人体には電荷が蓄積する。これらの人体に蓄積した電荷の放電を模擬するESD発生機から、EUT(Equipment under Test:試験対象機器)にESDを印加するには2種類の方法がある。一つは、EUTと何らかのものを直接接触させて放電を起こす接触放電である。もう一つは、EUTとの間に空気層が介在する状態で放電を起こす空隙放電だ。これらの試験方法は、IEC(国際電気標準会議)が定めたESDイミュニティ試験の規格であるIEC61000‐4‐2で規定されている。

 ESDイミュニティ試験の特徴は、立ち上がり時間が10ns以下で幅が約100nsという、低エネルギーの静的パルス(単発パルス)を使用することにある(図7)。また、1秒間隔で少なくとも正極性と負極性の放電を、それぞれ10回発生させる必要がある(図8)。

 多くの技術者は、機器に対するESD試験の規格としてIEC61000‐4‐2が最も信頼できると考えている。標準的な試験条件において、ピーク電流のレベルはHBM試験と比べて20倍、電圧レベルはCDM試験の8倍となっていることがその背景にある(図9)。

■EFTイミュニティ試験

図10 EFTイミュニティ試験に使用する単発パルスの波形 図10 EFTイミュニティ試験に使用する単発パルスの波形
図11 EFTイミュニティ試験におけるバーストのイメージ 図11 EFTイミュニティ試験におけるバーストのイメージ

 システムレベル試験の中で、IEC61000‐4‐4として規格化されているのが、EFT(Electrical Fast Transient:電気的高速過渡現象)イミュニティ試験である。EFTイミュニティ試験は、バーストイミュニティ試験とも呼ばれ、誘導性負荷の遮断やリレー接点の振動的な開閉、直流または交直両用のモーターの動作などに伴って恒常的に発生する過渡現象を模擬して行う。試験対象は、電源用、信号用、アース用など全ての配線である。

 バーストとは有限の幅をもつパルスの列のことである。EFTイミュニティ試験で使用するバーストは、100nsec以内に振幅がピーク値の50%に低下するパルス(図10)の列で、バースト発生機によって生成される。バースト内のパルス間隔は標準で1μsで、バーストの継続時間は15msec。バーストの間隔、つまり、バースト開始から次のバースト開始までの時間は300msとなっている。このバーストのオンオフを10秒間繰り返して、その後にくる10秒はバーストを印加しない。EFTイミュニティ試験は、この20秒間を1回の試験サイクルとして、6回繰り返す。総試験時間は、最後の試験サイクルのうちバーストを印加しない10秒を除くので110秒となる(図11)。EFTイミュニティ試験のポイントは、立ち上がり時間が短く繰り返しが多いものの、エネルギー的には低いパルスを使用することだ。

 EFTイミュニティ試験のパルスの立ち上りが高速でエネルギーが低いという特性は、ESDイミュニティ試験のパルス特性と似ている。しかし、1試験サイクル当たりのパルス数が異なる。EFTイミュニティ試験では、パルス間隔を1μsとすると、15ms継続する1バーストには少なくとも1万5000個のパルスが含まれる。バーストを印加する10秒間のバースト数は33.3個となるので、10秒間の総パルス数は50万個になる。したがって、110秒の総試験時間におけるパルス数は300万個になる。

 EFT試験パルスは、導体との直接の接触によってではなく、容量性クランプを介して間接的に印加する。このため、EUTとの接続に用いるケーブルがシールド構造を持つ産業グレードの場合には、EFTエネルギーのケーブル導体への結合が顕著に減衰する。このため試験結果に影響を与えることもある。

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