IDTは、テラバイト容量のエンタープライズSSDに向けたコントローラICを発表した。PCI Expressに直結可能なNVMe規格に準拠したことが特長だ。
米Integrated Device Technology(IDT)は2012年8月、NVMe規格*1)に対応した業界初のフラッシュメモリコントローラICのサンプル出荷を開始したと発表した。同ICを採用することで、エンタープライズ向けSSDの性能が向上する他、複数社のサーバに対応したSSDを開発しやすくなるという。
*1) 関連記事:PCI Express接続のSSD、推進団体が標準仕様「NVM Express 1.0」を策定
東京都内で開催した報道機関向けの説明会では、同社のSenior Director of Marketing Enterprise Computing DivisionのKam Eshghi氏が、エンタープライズSSD市場の現状と、同ICの特長を語った(図1)。
同氏によれば、エンタープライズ向けサーバではプロセッサやメモリの性能向上が著しい中、HDDの性能が伸び悩んでいるという。「現在のように仮想サーバを多用する環境では、サーバ機のストレージにランダムアクセス性能が強く求められる」(Eshghi氏)。ランダムアクセス性能を特に高めようとすると、HDDではなく、SSDが有利である。
エンタープライズ向けSSDでは、PCI Express接続が最も適切であるという。理由は、転送速度とコストだ。SAS(Serial Attached SCSI)の場合、転送速度は500Mバイト/秒にとどまるが、PCI Express接続の場合は3Gバイト/秒に高まる。つまり性能が6倍に向上する。「PCI Expressでは、SASとは異なりプロトコル変換のオーバーヘッドがなく、レイテンシも短い」(Eshghi氏)。加えて、開発コストの低減や部品点数の削減も可能だという。
エンタープライズ向けSSDでは、1秒間にどの程度の読み出し、書き込みが可能かを示すIOPS(Input Output Per Second)が性能指標となる。特に、IOPS当たりのコストと、電力当たりのIOPSである。今回のICでは、4Kバイトのランダム読み出し時の性能は75万IOPSであるという。
SASなどの従来のインタフェースでは既に速度の限界にぶつかっており、エンタープライズ向けサーバでは、従来、PCI ExpressにSSDを直結することが好ましいと考えられてきた。ただし、デバイスドライバソフトウェアの開発に課題があり、PCIへの直結化が進んでいなかったのだという。「現在のエンタープライズSSD市場では、プロプライエタリなデバイスドライバが必要であり、これがデバイスドライバの開発を阻害していた」(Eshghi氏)。
このような状況を受けて、2011年3月にはNVMe規格が策定、現在は米Intelや米Oracle、米EMC、米Dellなど90社以上によって、支持されているという。NVMeを利用すれば、SSDをPCI Expressに直結でき、デバイスドライバの課題を解決できる。米Gartnerの予測によれば、PCI Express対応のSSDの出荷台数は2011年の38万8000台から、2015年には349万7000台に成長する見込みである*2)。「成長が著しいという予測には理由が2つある。1つはNVMe対応品が標準となって、SSDの採用を促すこと、もう1つは、サーバの全面から2.5インチ型のSSDをホットプラグできる製品(図2)の拡大による」(同氏)。
*2) 同社の予測によれば、2012年時点で全SSD市場の売上高のうち、ほぼ半分をエンタープライズSSDが占めるという。
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