ハイエンドのD-Aコンバータを使う必要がないアプリケーションにおいて、シングルエンド出力のD-Aコンバータと外部回路を組み合わせて、必要十分な差動出力回路を構成できる回路を紹介する。
Analog Devices社の「AD9776/78/79」ファミリのようなハイエンドのD-Aコンバータは、製品自体が差動出力をサポートしている。しかし、さほど精度を必要としないAC信号を扱うアプリケーション、あるいは高い精度が要求されるものの、DCレベルの設定を行うだけのアプリケーションであれば、必ずしもハイエンドのD-Aコンバータを使う必要はない。シングルエンド出力のD-Aコンバータと外部回路を組み合わせることでも、必要十分な差動出力回路を構成できる。
図1に示したのは、正負の2電源を用いるアプリケーションでの回路例である。この回路では、8ビットの電流出力型D-Aコンバータ「AD5424」(IC1)と、シングルエンド出力を差動出力に変換するオペアンプ回路(IC2A、IC3A、IC3B)を組み合わせて所望の出力を得る。
電流出力型D-Aコンバータの出力インピーダンスは入力コードに依存して変化する。そのため、D-Aコンバータの出力段にはバッファを配置する必要がある。
図1では、IC2Aがそのバッファに当たるわけだが、AD5424の場合、単純にバッファリングするのではなく、図1のように構成することで、ユニポーラ出力モードで使用することができる。その場合、このD-Aコンバータの出力電圧は、次の式で決まる。
VOUT=−VREF×(D/2N)
ここで、VREFはリファレンス電圧、Nは入力ビット数、Dは入力2進コードに対応する10進値である。このD-Aコンバータは、リファレンス電圧として−10V〜+10Vが使用できるように設計されている。正負の2電源を使用するアプリケーションでは、図1のように、リファレンス電圧として負電圧を使用することで、信号を正の電圧として扱えるわけだ。なお、ゲイン調整は、抵抗R1、R2の値を変更することによって行う。
シングルエンド出力を差動出力に変換する部分は、クロスカップリングされた2個のオペアンプから成る。各オペアンプは抵抗R5、R6を介してゲイン1のボルテージフォロワを構成している。また、回路に対称性を持たせるために、各オペアンプの出力を、抵抗R7、R8を介してもう一方のオペアンプの反転入力端子に接続している。
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