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D-Aコンバータの出力を差動出力に変換するDesign Ideas アナログ機能回路(2/2 ページ)

» 2015年09月25日 11時30分 公開
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 コモンモード電圧(AC信号のセンター電圧、ないしはDCオフセット)は、オペアンプIC3Bの非反転入力端子に印加される電圧によって決まる。また、差動出力信号の振幅は、抵抗R3、R4によって設定する。実際にこの回路を使用する場合には、出力負荷条件、オペアンプの許容入出力電圧を確認する必要がある。図2に、シングルエンドのD-Aコンバータ出力を差動出力に変換した結果を示した。

回路の使用目的に応じたオペアンプを

 単一電源のアプリケーションでは、図3に示すように、リファレンス電圧VINをD-AコンバータのIOUT1端子に入力し、信号出力をVREF端子から取り出せばよい。AD5424では、このように構成することで、正のリファレンス電圧を使って正の出力電圧を得ることができる。この例ではD-AコンバータのRFB端子にはフィードバック抵抗を接続しないでIOUT1端子と直接接続している。これにより、浮遊容量が付加されるのを防いでいる。

図2:シングルエンド出力を差動出力に変換した結果 (クリックで拡大)

 図3では、IOUT1端子への入力バッファとして、またVREF端子(D-Aコンバータの出力)の出力バッファとしてデュアルオペアンプ「AD8042」を使用しているが、ここで用いるオペアンプは、回路の使用目的に応じて選択する必要がある。例えば、低速ではあるが高精度を要するという場合には、DNL(differentialnon linearity:微分非直線性)の劣化を防ぐために、入力バイアス電流および入力オフセット電圧が小さいものを選択する。例えば、オペアンプ「AD8628」であれば、室温でのバイアス電流の最大値は100pA、入力オフセット電圧の最大値は5μVである。

 また、高精度が要求されるものの、DCレベルを設定するだけでよいアプリケーションでは、オペアンプの低周波ノイズ特性を重視すべきだ。例えば、AD8628では0.1Hz〜10Hzのノイズは0.5μVp-pである。このオペアンプはレールツーレールの入出力が可能なので、単一電源のアプリケーションに適している。

図3:シングルエンド出力を差動出力に変換する回路(その2) (クリックで拡大)
この回路では、正のリファレンス電圧により、正の出力電圧が得られる。単一電源のアプリケーションで使用できる

 高速信号を扱うアプリケーションでは、オペアンプのスルーレートによって、出力信号のスルーレートが制限されてはならない。また、オペアンプの帯域幅が、回路全体の帯域幅を制限することがないようにする必要がある。通常は、D-Aコンバータの出力電圧のセトリング時間によって、回路の最大更新速度が制限されるように設計する。図1、図3で使用しているAD8042は、帯域幅が170MHz、スルーレートが225V/μsである。

 なお、AD5424の消費電流はわずか0.4μAである。従って、回路全体の消費電力は主にオペアンプの消費電力で決まる。また、実装面積を最小限にしたい場合は、図3のオペアンプ4個を1個のクワッドオペアンプ「AD8044」で代替するとよい。


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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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