オフラインのスイッチング電源が放射する電磁雑音(EMI)は電源回路全体に影響を与えるため、さまざまな問題が発生する。基板レイアウトは特に重要だ。今回は、電圧と電流のスルーレートを閉ループ回路で制御することで雑音を低減する回路を紹介する。
オフラインのスイッチング電源が放射する電磁雑音(EMI)は、電源設計者を悩ませる。FCC(米連邦通信委員会)のEMI規制値を満足するには、外形寸法が大きいEMIフィルターが必要だろう。スイッチング回路は雑音を発生し、電源回路全体に影響を与える。このためさまざまな問題が発生する。基板レイアウトは特に重要だ。熟練した電源設計者であっても、試行錯誤が必要になる。
図1は、電圧と電流のスルーレートを閉ループ回路で制御することで雑音を低減する回路である。複雑に絡み合う雑音に関する問題を大幅に簡略化できる。この回路は、高周波雑音を低減するために使う、交流(AC)ラインと接地端子間のコンデンサー(Yコンデンサー)を必要としない。このコンデンサーを使わなければ、漏れ電流を低く抑えることを厳しく定めた、「UL544」や「UL2601」、「CSA22.2」といった医療機器向けの規格に簡単に適合できる。このため特に医療機器に適した回路といえる。
図1は、30W(12V、2.5A出力)のオフライン電源である。低雑音のフライバック型スイッチング電源用制御IC1「LT1738」を使ってQ1を駆動する。このIC1はRCSL端子に接続する抵抗の値を変えることで、電流スルーレートを連続的に制御できる。
さらに、RVSL端子に接続する抵抗と、CAP端子に接続するコンデンサーを利用して、電圧スルーレートを決められる。プログラマブル基準電圧源IC「LT1431」とフォトカプラーが、「LT1738」に対する絶縁された閉ループを形成する。この回路はIC1のCS端子に接続した抵抗(68mΩ)を流れる電流を検出して、電流制限を行う。Q2とQ3を中心とした回路は、ヒステリシス動作付きの低電圧ロックアウト回路を構成している。
図1の回路は、起動時にC5がR1を介して充電されて12Vに達するまでSHDN端子はローレベルを出力する。その後IC1はオンになり、トランスT1の補助巻線を経由して動作用の電力を受け取る。帰還信号は、フォトカプラーの帰還利得がIC1内部の帰還利得と同じであるため、IC1のFB端子ではなくVC端子に直接接続する。C6とL1は、IC1のスイッチング時に発生する高調波の低次成分を減衰させる役目を果たす。
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