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スペクトラムアナライザーの構造と基本的な設定スペクトラムアナライザーの基礎知識(2)(1/5 ページ)

今回はスペクトラムアナライザーの構造や基本的な設定、仕様上の注意点について解説を行う。

» 2021年09月13日 10時00分 公開
[TechEyesOnline]
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 本記事は、計測器専門の情報サイト「TechEyesOnline」から転載しています。

スペクトラムアナライザーの構造

 アナログ方式の掃引型スペクトラムアナライザーの基本的なブロック図を示して機器の機能を説明する。

図1:アナログ方式の掃引型スペクトラムアナライザーの構造
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 入力信号はアッテネータを介してミキサーに入力される。周波数を外部信号によってスイープできるローカル発振器とミキサーによって入力信号は中間周波数に変換される。観測する信号のダイナミックレンジが広いため、中間周波数に変換された信号は対数増幅器を通過させることによってLOGスケール(対数目盛り)となる。その後、検波器とビデオフィルターを通過して画面に表示される。画面の縦軸はレベル、横軸は周波数である。横軸の周波数はローカル信号を制御する掃引発振器の信号となる。縦軸と横軸が決まることによって周波数分析をした結果は2次元で表現できる。

【ミニ解説】ミキサーの機能

 ミキサーは2つの入力信号を掛け合わせることができるデバイスである。周波数がf1とf2の正弦波信号をミキサーによって掛け合わせると、f1+f2の周波数成分を持つ信号とf1−f2の周波数成分を持つ信号が出力される。

図2:周波数ミキサーの機能

 スペクトラムアナライザーでは、ミキサーの出力を周波数帯域幅が可変できるバンドパスフィルターを使って和もしくは差の周波数を中間周波数信号として取り出せる仕組みとなっている。

 スペクトラムアナライザーの性能はローカル発振器の性能に依存する。ローカル発振器の位相雑音(発振周波数に揺らぎ)が大きいと、入力信号の周波数成分を正しく表示することができなくなる。

図3:スペクトラムアナライザーの発振器の位相雑音性能を良くする理由

 例えば、測定信号の近傍にスプリアスや波形の持ち上がりがあった場合、位相雑音の悪いスペクトラムアナライザーでは測定できないが、位相雑音の良いスペクトラムアナライザーであれば測定できる。

図4:位相雑音の良いスペクトラムアナライザーと悪いスペクトラムアナライザーの違い

 このため、スペクトラムアナライザーに搭載されるローカル発振器は外部制御電圧によって幅広い発振周波数の制御ができ、かつ位相雑音が小さいことを要求される。スペクトラムアナライザーのローカル発振器にはVCO(Voltage-controlled oscillator)もしくはYTO(YIG Tuned Oscillator)が使われる。それぞれの特長が異なるため製品に要求される性能によって使い分けられている。

表1:VCOとYTOの特長の比較
発振器に関する性能項目 VCO YTO
掃引速度 ×
コスト性 ×
周波数リニアリティ ×
発振器の位相雑音 ×
出典:低位相雑音シンセサイザーを搭載した
シグナルアナライザーMS2840Aの開発
(アンリツテクニカル No. 92 Mar. 2017)

 スペクトラムアナライザーには観測する信号を入力する端子以外に、基準周波数の入力端子(10MHz Ref入力)や出力端子(10MHz Ref出力)がある。これらの端子は、複数の測定器を使ってシステムを構築する場合に基準となる周波数源を1つにするために使われる。

 IF出力は設定した周波数帯域での信号レベルを観測するときに使われる。その際はスペクトラムアナライザーのスタート周波数とストップ周波数を同じにするゼロスパン設定として、IF出力端子の信号を高周波電力計に接続して測定を行う。電波法で免許がいらない10mW以下のスペクトラム拡散方式無線装置では10mW/MHz以下の電力密度が規定されているため、IF出力端子を使う測定が行われている。

 その他にも、IF出力信号をオシロスコープなどで波形をメモリに取り込んでから変調解析を行う場合もある。

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