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ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(3)たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(5)(2/4 ページ)

» 2024年01月29日 11時30分 公開

最小インダクタンス値LMIN

 インダクターが電流連続性を発揮するにはインダクターに流れる電流ILが連続でなくてはならず電流が“0”になると電流連続性の前提条件が成立しなくなります。
つまりDC/DCコンバーターはILの最小値(=Io−ΔI/2)が常に正値になるような負荷の範囲で使用する必要があります。

2式

 2式からΔIは最小負荷電流Io(MIN)の2倍以下に抑えなければならないことが分かります。例えば5V/0.1Aまで使用するならΔIは200mAP-P以下にします。具体的にはインダクター電流の増分や減少の式から次のように計算します。

3式

 3式から必要なインダクタンス値LMINが最も大きくなるのは負荷抵抗RLが最大、入力電圧Vが最大の時です。このLMIN値は先に説明したI(sat)とも関係しますので無駄に大きくはできません。
 コアには性能を表す指数として「LI2積」がありますがこのIはI(sat)のことです。ギャップ長やコアの断面積を大きくすればこのI(sat)、つまりLI2積は大きくなります*3が必要以上に要求値に余裕を持たすとチョークの形状、ひいては価格面にも影響します。

 経験的ですが連続電流の下限値に仕様上の余裕がある場合でも定格出力電流の20〜30%程度に臨界負荷電流Io(MIN)を設定するとリップル電圧や負荷応答特性、過渡短絡電流、立ち上がり時間などの両立がうまくいくケースが多く見られました。

*3:最大負荷電流がパルス的であり、温度上昇に影響しない場合にはNI2積は(コア断面積Ae)×(コアギャップ長lg)に比例します。連続最大電流はコアの窓面積に関係します。

温度上昇

 チョークは銅損とコア損失によって発熱します。コアの損失はΔIに比例するためトランスほど損失の占有率は高くなく、チョークの損失としては銅損が主になります。一方の銅損は高周波(100kHz超)になると近接効果や表皮効果と呼ばれる現象が顕著になってきて太い銅線を使用しても銅損は低下しなくなります。加えて太い銅線ではギャップ周辺から空中に飛び出す漏洩磁束による渦電流損も増加します。
 近接効果はチョークでは有効な対策がありませんが表皮効果や渦電流損を低減するためにはリッツ線と呼ばれる特殊な銅線を用いることが有効です。もちろん電流に対応した適切な銅線径を使用することは欠かせません。

 コアは無機質材料ですから基本的には温度制限はありませんがコアに触れるボビンやウレタン銅線などは有機材料ですから温度制限があります。これらの材料は非絶縁形のDC/DCコンバーターといえども機能絶縁として安全規格の規制を受けます。したがって使用時の温度上昇は規制温度に対して10℃の温度マージンを採ってください。

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