MIPSアーキテクチャの誕生は以前ITmedia Newsで説明しているので繰り返さない。1985年にR2000、1988年にR3000、1991年にはR4000をそれぞれ開発して広範に利用されるが、この当時は主にワークステーション(一部サーバ)向けがメインで、Embedded向けとは言いにくかった。例外はあって、例えば旧MIPSの従業員が1991年に立ち上げたQuantum Effect Designという会社はMIPSからR4000のIPのライセンスを受け、これをベースにR4650というSTB(Set-Top Box)向けのSoCを1994年に発表しているし、その基になった1993年のR4600はネットワークルーターやアーケードゲーム向けなどにも採用されていた。
ただこうしたケースはむしろ例外に近かった。そしてMIPS自身は1992年にSGIに買収され、より高性能なプロセッサ開発の方向に舵を切る。ところがSGI自身の方針転換(将来製品をMIPSベースのプロセッサから、IntelのItaniumベースに切り替える)を受けて1999年にSGIからスピンアウト。2000年にはMIPS Technologiesとして独立企業になった(IPO自体は1999年に行われたが、2000年にSGIがMIPSの株を全て手放した事で名実ともに独立した)。
同社がEmbeddedに舵を切るのはここからである。以前「Appleの通告は「MIPSの終わり」の始まりか」でも説明したが、R3000は当時のワークステーションなどに広く使われるほどの性能を誇っていた。1999年のスピンアウト時に同社はそれまでのCPU提供企業(IPライセンス/セカンドソースもあり)からIPライセンス企業に完全に鞍替えしたが、これにあたり同社からは32bitの「MIPS32 4Kシリーズ」と64bitの「MIPS64 5Kシリーズ」が提供開始された。このMIPS32 4Kの方は構成次第でR3000と同等の性能を発揮するとされ、さまざまな企業がこのMIPS32 4Kコアを利用したSoCのラインアップを増やしし始める。筆者が把握している範囲でも
ATI/Atheros Comunications/Brecis Communication/IDT/Infineon Technologies/Ingenic Semiconductor/Lexra/Microchip/Oak Technologies/QED/QuickLogic
といったメーカーがMIPS32のIPライセンスを取得している。またこれとは別にArchitecture License(MIPS命令セットに基づく独自CPUコアを開発する権利)を取得したメーカーには
Alchemy Semiconductor/Broadcom/Cavium/NEC/NetLogic/PMC-Sierra/SiByte/RMI Corporation/ソニーや東芝/STMicroelectronics
などがある。例えばソニーの「PSP(PlayStation Portable)」はR4000ベースの32bit CPUコアだし、その前のPS2に搭載されていたEmotion EngineはMIPS R5900をベースとした独自設計だった。NECはR4000シリーズをベースに(つまりMIPS64 5Kシリーズ以前の設計をベースに)VR4000シリーズを展開していた(図3)。多分最初のEmbedded向けの64bitプロセッサは、このMIPS R4000を起源とするものだったと思われる。
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