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SAR型A-Dコンバータをオペアンプで駆動するときの留意点Baker's Best

» 2006年08月01日 00時00分 公開
[Bonnie Baker,EDN]

 SAR型(逐次比較型)A-Dコンバータをアンプのみで駆動させたい。ついでに、アンプ回路をゲイン段やアンチエイリアス(折り返し防止)フィルタ段に配置したい。これは回路を最適化する方法として、正しい手段であるようだ。しかし、それによって変換精度が低下することを考えたことはあるだろうか(図1)。


図1 回路が最適でないため、変換精度が劣化してしまった例 図1 回路が最適でないため、変換精度が劣化してしまった例 SAR型A-Dコンバータの駆動方法が適切でないと、望ましくないノイズや高調波歪が発生してしまう。この12ビットA-Dコンバータは、SNR(信号対雑音比)は71.82dB、THD(全高調波歪)は−78.82dBの実力がある(いずれも、フルスケール信号入力時)。しかし、駆動方法が適切でないためにノイズや歪が発生し、SNRは69.76dB、THDは−63.34dBしか得られていない。 

 DCにおいてもACの場合と同様に、スループットを気にせず正確な性能を得ようとするならば、SAR型A-Dコンバータのアナログ入力段に工夫が必要である。最新のA-Dコンバータの入力段モデルは、2つのスイッチと電圧源、抵抗、コンデンサからなる(図2)。ここで、抵抗RSWはスイッチを閉じた(オンした)ときの等価抵抗。このスイッチは、変換処理のうち、データ取得中は閉じており、変換中に開く。A-Dコンバータは、容量CSHを利用して入力信号をサンプリングする。CSHの容量値は、チップ上に存在する寄生容量の値も含めて考える。

図2 SAR型A-Dコンバータの入力段 図2 SAR型A-Dコンバータの入力段 SAR型A-Dコンバータの入力段には、サンプルホールド回路がある。サンプリング時間を制御するスイッチS1と、それに続いて配置されている、電荷の保持用コンデンサCSHが主たる要素である。

 重要なことは、コンデンサCSHを充電するために十分な充電時間を与えることである。理論的には、12ビットのA-Dコンバータの場合、RSW×CSHの8倍以上の時間が必要である。誤差や部品による違いを考慮して、10〜15倍の時間をとるのがよいだろう。SARコンバータには、ゲイン±1V/V以上のオペアンプと抵抗RINとコンデンサCINが必要となる。A-Dコンバータのサンプリング時、コンデンサCINは信号を安定させる役割を持つ。抵抗RINは、アンプをA-Dコンバータの負荷容量から隔離する。オペアンプは、A-Dコンバータを高インピーダンス負荷から隔離して、CINおよびCSHを駆動する。これにより、A-Dコンバータがサンプリング中、素早く充電できる。

 この回路は、次の指針に従って設計してほしい。CINには、銀マイカ・コンデンサか、C0G特性(温度範囲−55〜125℃、温度係数0±30ppm/℃以内)のコンデンサを用いること。これらのコンデンサを用いると、CSHの電圧と周波数特性が安定する。X7R特性(温度範囲−55〜125℃、温度係数±15%以内)やZ5U特性(温度範囲10〜85℃、温度係数+22〜−56%)などのコンデンサは、電圧や周波数を「記憶」するため、コンバータのTHD特性を劣化させる恐れがある。CINの値は少なくともCSHの20倍よりも大きくすること。RINの値は、A-Dコンバータの内部抵抗と内部コンデンサの値から計算する。50Ω<RIN<2kΩとし、CINとRINの最終的な時定数は、CSHとRSWの時定数の70%とすること。最後に、CINとRINを含むオペアンプ回路は、A-Dコンバータの分解能に近づけるようにし、かつ、ステップ応答信号を駆動する必要がある。この機能はベンチテストで確認できる*1)

<筆者紹介>

Bonnie Baker

Bonnie Baker氏は「A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers」の著書などがある。Baker氏へのご意見は、次のメールアドレスまで。bonnie@ti.com


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