ワイヤレスイヤフォンやスマートホンなどのモバイル機器では、無線信号と音声信号の相互干渉を防ぐために「チップビーズ」が使われていた。しかしチップビーズは音声信号に歪みを発生させ、音質に影響を与える。そこで開発されたのが、TDKの「MAFシリーズ」だ。
オーディオ製品において、ノイズ対策は重要な問題だ。特にワイヤレスイヤフォンやスマートフォンなどのモバイル機器は、無線通信との干渉も抑える必要がある。
TDKは、通信と音声の品質を両立すべくオーディオライン用ノイズサプレッションフィルター「MAFシリーズ」を開発した。
ワイヤレスイヤフォンやスマートフォンといった、オーディオ再生機能を有するモバイル機器は、音声再生にD級アンプを用いることが多い。D級アンプからの出力信号には高周波ノイズが含まれていて、アンプとスピーカーをつなぐオーディオラインから放射されると、内蔵アンテナに干渉(自家中毒問題)して受信感度を低下させる。
一方、アンテナから放射されるRF信号がオーディオラインを伝ってオーディオ回路内に入り込むと、音声ノイズを発生させる可能性がある。つまり、オーディオライン上でのノイズ対策が、モバイル機器の品質向上に効果的というわけだ。
対策として、従来はノイズ除去部品のチップビーズが用いられてきた。チップビーズはフェライト素体の中にコイルを形成したチップ部品で、低周波領域では主にリアクタンス成分が機能してノイズを反射、高周波領域では主に交流抵抗成分が機能してノイズを吸収し、熱に変換する。
チップビーズで通信品質は問題なく改善できる。しかし音声信号には歪みを発生させてしまう課題があったという。そこでTDKは、ノイズ除去特性を維持しつつ低歪化を実現するフェライト材を新開発し、オーディオラインのノイズ対策に特化した積層チップ部品「MAFシリーズ」を開発。LTEなど主要セルラーバンド(700M〜2GHz)で高減衰特性を持ち、受信感度の改善に貢献するGタイプと、D級アンプの出力段に挿入することで高周波ノイズ除去に貢献するFタイプの2種類を展開する。
TDK 電子部品ビジネスカンパニー 製品&アプリケーションコラボレーション部の折原正志氏によると、フィーチャーフォンが主流だった頃は、そもそも携帯電話の音質自体が良くなかったため、音声信号の歪みも気にされなかった。スマートフォンの時代になり、ハイレゾ音源が登場するなど、デジタルオーディオの高品質化に伴い、高音質部品の需要も生まれ開発に至ったという。
「以前からオーディオ設計者の間では『チップビーズは音が悪い』といわれていたそうだ。しかし、ほとんどの人にとっては気にならない、気付かない程度の違いなうえ、通信品質が悪くては製品として使えない、とチップビーズが使われていた。ハイレゾ対応スマートフォンの開発など、オーディオ設計者もチームに加わるようになったことで、MAFシリーズのような音質も通信品質も両立できる部品が求められるようになった」(折原氏)
現在、シリーズ新製品として、5GHz以上のハイバンド帯域に対応するモデルを開発中だ。
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