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進化を続ける組み込みシステムボード規格“究極の標準”を求めて(3/4 ページ)

» 2007年06月01日 00時00分 公開
[Warren Webb,EDN]

ゼロから作られた標準規格

 さまざまなアプリケーション向けに最適なシステムボード規格のアーキテクチャを策定する方法がある。それは、既存の製品にとらわれず、最新技術をベースとしてゼロから新しい規格を作成することである。このような方法で策定された規格にAdvancedTCA、AdvancedMC、 MicroTCAがある。

・AdvancedTCA

 2003年に制定されたAdvancedTCAでは、次世代の通信機器用にまったく新しいボード、バックプレーン、ソフトウエア仕様が作成された。従来よりも大きなサイズ、高い可用性、高速な接続を提供する同規格は、通信業界で広く使用されている独自機器に置き換わる市販製品を生み出す可能性を秘めている。

 AdvancedTCA規格では、すべてのボードとアクティブモジュールがホットスワップ可能になっており、システムの99.999%以上の可用性を達成する。ファブリックインターフェースはフルメッシュ接続が可能であるため、各スロットはほかのどのスロットにも直接接続できる。

・AdvancedMC

 AdvancedTCA規格を設計したメンバーらは、さまざまな高性能アプリケーションに適応可能とするため、ベースとなるアーキテクチャと同一の機能を持つ多くの置換可能なプラグインモジュールの仕様も策定した。そのプラグインモジュール規格がAdvancedMC(advanced mezzanine card)である。同規格はホットスワップを可能とし、現場で置換可能なモジュールを提供することで、メンテナンスコストとシステム停止時間を低減している。AdvancedMCモジュールのサイズは約3インチ×7インチ(約7cm×18cm)で、遠隔管理技術とスイッチファブリック技術が盛り込まれている。モジュールには、コンパクト、ミッドサイズ、フルサイズの3種のフェースプレートがあり、シングルまたはダブルサイズ構成で提供される。

 AdvancedMCは、AdvancedTCAキャリアカードが必要とするIPMI(intelligent platform management interface)のサブセットを採用している。IPMIにより、機器の電源管理、冷却、電子キーイング、ホットスワップ処理の監視がローカルまたはリモートで可能となる。

 米Emerson Network Power社(旧Artesyn Communication Products社)は最近、Intel Pentium Mプロセッサを搭載したAdvancedMCモジュール「KosaiPM」を発表した(図2)。このKosaiPMは、プロトコル処理、パケット処理、データ管理、I/O管理などの面で、さまざまなアプリケーションに必要な性能を提供する。同モジュールは、最大1.8GHzで動作する低電力プロセッサや2Mバイトのレベル2キャッシュ、最大2GバイトのECC(error check and correct)機能付きのDDR SDRAM、512Mバイトのフラッシュメモリー、USB 2.0インターフェース、RS-232コンソールインターフェースを備える。また、カード外部への高速パケットデータ通信を実現するために、ベースボードへのPCIeインターフェースと2つのギガビットイーサーネットインターフェースが用意されている。さらに、KosaiPMにはI2CベースのIPMIもあり、モジュールを監視して遠隔から制御できるようになっている。ホットスワップが可能であり、予備の部品を用いるコストを削減し、障害発生時の復旧時間の短縮を実現する。

図2 EmersonNetworkPower社のKosaiPM 図2 EmersonNetworkPower社のKosaiPM KosaiPMは、AdvancedMC規格に準拠したプロセッサモジュール。ホットスワップ機能を特徴とし、PCIExpressとギガビットイーサーネットインターフェースの両方を備える。

・MicroTCA

 上述したように、AdvancedMCは高性能で、ホットスワップとスイッチファブリックに対応し、優れた管理機能を備えている。それにとどまらず、このAdvancedMCをさらに活用することが考えられた。具体的には、同規格に対応した機器を小型のスタンドアロンシステムのバックプレーンに直接接続して使用することである。業界の合意を得るまでにはかなりの労力を要したが、PICMGは2006年7月、そのための規格としてMicroTCAを発表した。

 MicroTCAは、AdvancedMCカードを直接接続可能なバックプレーンを持つスタンドアロンの筐体を提供し、AdvancedTCAキャリアボードを不要とした。コンパクトになったことで、通信における低予算のアプリケーションやさまざまな組み込みシステムプロジェクトで利用できるようになっている。

 PICMGのウェブサイトで閲覧可能なMicroTCA規格を見ると、1個以上のAdvancedMCモジュール、1個以上のMicroTCAキャリアハブ、電源モジュール、およびそれらをサポートするインターコネクト、冷却システムなどの機械部品の集まりとしてMicroTCAシステムの最小構成が定義されている。MicroTCAキャリアハブには、モジュールの中に最大12個のAdvancedMCをサポート可能とするインターコネクトファブリックリソースと制御および管理用インフラストラクチャが統合されている。MicroTCA電源モジュールは入力電力を12Vに変換し、各 AdvancedMCモジュールに供給する。

 例えば典型的なMicroTCAシステムは、最大12個のAdvancedMCモジュールと1つか2つのキャリアハブ、複数の電源モジュール、冷却ユニット、バックプレーン配線、および筐体などのメカニカル構造から構成される(図3)。また、アクティブコンポーネントを2個にして、冗長性を持たせることも可能である。

図3 典型的なMicroTCAシステム 図3 典型的なMicroTCAシステム 典型的なMicroTCAシステムは、最大12個のAdvancedMCモジュール、キャリアハブ、電源モジュール、冷却ユニット、およびバックプレーン配線から構成される。注)略語の意味は以下の通り。MCMC:MicroTCAキャリア管理コントローラ,JSM:JTAGスイッチモジュールEMMC:拡張モジュール管理コントローラ,AMC:AdvancedMCモジュール

 米Elma Electronic社は最近、フルサイズ版シングルモジュールに対応した14個のスロットを備え、デュアルスター型バックプレーンを持つ5U MicroTCAシェルフを発表した。バックプレーンには、AdvancedMC用に10個、電源モジュール用に2個、Micro TCAキャリアハブ用に2個の合わせて14個のスロットがある(図4)。冷却は、3つのエアーフィルタ付きプラグインファントレイで行う。同製品の価格は、2000米ドル弱からである。

図4ElmaElectronic社の5UMicroTCAシェルフ 図4ElmaElectronic社の5UMicroTCAシェルフ 5UMicroTCAシェルフは、AdvancedMC用に10個、電源モジュール用に2個、キャリアハブ用に2個の計14個のスロットを備える。

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