規格が前バージョンから進化したものであれ、ゼロから作成されたものであれ、設計者が求めるのは、多種多様なメーカーができる限り低コストで互換性のある技術的に高度なボードを製造できるような安定した標準規格であることだ。さらに、そのまま利用可能なCOTS(commercial off the shelf)ボードが豊富に提供されることが、高性能な組み込みシステム開発には不可欠である。
組み込みシステムの開発者がすでに理解しているように、すべてのプロジェクトに適用可能な究極の標準規格など存在しないし、これからも出現することはないかもしれない。しかし、エレクトロニクス技術が引き続き発展するならば、標準規格は定期的にアップデートされ、多くの新しい概念が追加されていくであろう(別掲記事『積層型ボードの新しい方向性』を参照)。そうでなければ、リードタイムが長く、コストのかかる独自設計へと戻らなければならないのだから。
システムボード規格は、最新のシステム要件に対応して改良されていくか、S-100バスやMultibusのように陳腐化して消えてしまうかのいずれかである。PC/104コンソーシアムは、パソコン業界からはなくなったISA(industrial standard architecture)バスへの対応に苦慮している。
PC/104コンソーシアムは同規格をPCIバス(PC/104-Plus)に対応させてから、ISAバスへの対応を削除するようにアップデートを行った(PCI-104)。しかし、多くの市販ボードではまだISAバスを使用したいケースがあるため、ISAバスに対応したデバイスがいまだに必要とされている。
そもそもPC/104はバックプレーンを必要とせず、モジュールをビルディングブロックのように積み上げることができる規格であるため、組み込みシステム設計者にはよく使用されている。3.55インチ×3.775インチ(90.17mm×95.89mm)のモジュールの角にあるマウンティングホールにより、複数のボードを重ねて互いに締めつけることができるため、一般的なパソコンモジュールなどより堅牢である。
長い間PC/104対応製品を提供してきた米Micro/sys社は、最近、PC/104のフォームファクタを引き継ぐ、まったく新しい積層型のアーキテクチャ「StackableUSB」を開発した。この新しいアーキテクチャは、コンパクトで積層可能というPC/104の利点を引き継ぎつつ、 USBの通信プロトコルを採用している。最大16個のペリフェラルボードとUSBのプラグアンドプレイ機能をサポートすることに加え、ビルトインのスタックスルーコネクタ付きのケーブルが不要である。
Micro/sys社はさまざまなベンダーからのサポートを得ようと、すでにCPUボードと汎用I/Oカードを発表している。汎用I/Oカード「USB148 I/Oモジュール」(図A)は、ソフトウエアによりプルアップ/プルダウンの設定が可能な48本のデジタルTTL I/Oラインと、3個の16ビットタイマー/カウンタを備える。USB148 I/Oモジュールで核となるのは48MHzで動作する8051互換のマイクロコントローラユニットであり、10ビットのA-Dコンバータ、2個のUART など多くの周辺機器が集積されている。このUSB148 I/Oモジュールの単価は125米ドルからである。
Micro/sys社は、USBを介したデータ転送のための定義済みプロトコルを提供する。そのため、ユーザーはマイクロコントローラ用のUSB通信プロトコルを開発する必要がないという利点がある。
このStackableUSB規格は、PC/104規格の進化の方向性を垣間見せているのものだといえよう。
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