電池技術の進化を促進する主要分野はノート型パソコンだけではなくなったが、ノート型パソコン自体にも変化が生じている、例えば、OLPC(One Laptop Per Child)という団体によって行われている製品の設計が良い例である。同団体の開発者らは、開発途上国の子供たちに100米ドルでノート型パソコンを提供するという目標を掲げている。これを実現するために、OLPCはかなり困難な数多くの技術的課題を克服してきた。例えば、信頼性の高い電力供給が得られない地域で、どのようにしてノート型パソコンの電源を得るのかといったことである。
OLPCの設計者らは、ノート型パソコン「XO」に利用可能な電源について、太陽光発電と人力発電の両面からいくつかのオプションを考案した(図3)。OLPCによると、XOの消費電力は2Wで、今日の標準的なノート型パソコンの1/10程度である。OLPCは、XOにおける電源供給源の第1候補は、形状は洗練されているものの、より高価なシリコン/水晶ベースの太陽光パネルではなく、米ECD Ovonics社製の薄膜太陽光パネルであると考えている。OLPCは、このパネルに対し、「実質的に破壊不能」という表現を用いており、「子供たちが利用する機器の性質として理想的だ」としている。XOは、英Freeplay Energy Group社製の手動式クランクと、中国Gold Peak Industries社、中国BYD Batteries社製のリチウムリン酸鉄電池パックも搭載している。
電池はこの先どのように進化するのだろうか。さらなる容量増と安全性を追求するのならば、リチウム系の材料を使うということが最終結論ではないだろう。民生市場向けに銀亜鉛電池を供給する米ZPower社は、「Intel Developer Forum」のセッションにおいて、ノート型パソコン向けプロトタイプ版のデモを実施した。ZPower社は、「当社の電池は200Whr/kgの実力を備える。不燃性であり、ゴミになるような材料は使用していない」と主張している。とはいえ、銀は最も高価な電池材料の1つである。これについて、ZPower社社長のRoss Dueber博士は「当社は、リチウムイオン電池との価格差を20%に抑えるために、当社製電池の下取りプログラムを確立し、すべての銀を効率良くリサイクルする予定だ」と語っている。
また、ポータブル電源は、もはや従来の電池でしか実現できないものではない。例えば、米Medis Technologies社は、ホウ素水素化物溶液を用いたマイクロ燃料電池「24-7 Power Pack」を提供している。3.8〜5Vで1Wの電力を提供し、これにより、携帯電話機やMP3プレーヤなど小型民生機器への給電が可能である。MP3プレーヤであれば、60〜80時間利用できる。この小型でリサイクル可能なポータブル電源の価格は19.99米ドルである。
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