メディア

DC-DCコンバータのノイズ対策[理論編]徹底研究!ノイズの発生原因を理解する(5/5 ページ)

» 2008年12月01日 00時00分 公開
[財津 俊行(日本テキサス・インスツルメンツ),EDN]
前のページへ 1|2|3|4|5       

「数nHのインダクタンス」に要注目

 上述した実験結果、シミュレーション結果から、1つの重要なポイントが浮かび上がる。それは、ノイズの発生源であるQ2(のボディダイード)がターンオフするとき、またQ1がターンオフするときに発生するスパイク/リンギング電流は、数nHのインダクタンスに蓄えられているエネルギーを放出しているということである。これがパワーMOSFETやダイオードの寄生容量と共振して、高周波のスパイク/リンギング電圧を作り出しているのだ。さらに、このエネルギーが高周波のリンギングループから磁束として放射されているのである。

 このことから、スイッチング方式のDC-DCコンバータでは、ノイズの対策として、数nHという小さなインダクタンスに気を配って検討しなければいけない。


 以上、今回は『理論編』として、絶縁型スイッチング方式のDC-DCコンバータにおけるノイズの発生源や、発生メカニズム、伝搬モードの基礎理論について解説するとともに、実験/シミュレーションによる確認結果を紹介した。次回は、『実践編』として、基板設計におけるノイズ対策のポイントについて具体的に解説する。

コモンモードノイズの影響

 ノイズの分類は、本編の前半で取り上げているもの以外に、もう1つ電流経路による方法が考えられる。すなわちノーマルモードノイズとコモンモードノイズの2種類である。

 一般的な定義でいうと、ノーマルモードノイズとは、信号ライン間、もしくは電源ライン間に発生するノイズのことである。

 一方のコモンモードノイズは、グラウンド(大地)と信号ラインもしくは電源ラインの間に発生する。絶縁型のAC-DC電源装置やDC-DC電源装置などでは、電源盤にフレームグラウンドがあり、パワーMOSFETやダイオードのヒートシンクなどで発生した高dv/dtのノイズが、フレームグラウンドとの間に存在する寄生容量を介してコモンモードノイズとなり、入力端子や出力端子へと伝搬する。

 ただ、本稿で対象とするような数Wクラスの電力の非絶縁型DC-DCコンバータの場合、パワーMOSFETの電圧振幅も10V〜20V程度と十分に小さいし、大きなヒートシンクを付けるわけでもない。従って、コモンモードノイズの影響は小さいと考えられる。そのため、本稿ではこのノイズは除外して論じている。


前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

RSSフィード

公式SNS

EDN 海外ネットワーク

All material on this site Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
This site contains articles under license from AspenCore LLC.