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» 2009年01月01日 00時00分 公開

ΔΣ変調応用ICの進化は止まらず、アナログICベンダーが新製品を続々投入(2/2 ページ)

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マルチチャンネル機器向けのオーディオコーデック/DAC

 日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2008年11月、オーディオコーデック(A-D/D-Aコンバータ)製品とD-Aコンバータ(DAC)製品を発表した。Blu-ray機器、ホームシアター機器など、マルチチャンネルのオーディオ機器をターゲットとした製品ラインアップの拡充を図るものである。

 発表したのは、マルチチャンネルのオーディオコーデック「PCM3168A」、マルチチャンネル/ステレオのオーディオD-Aコンバータ「PCM1690」、「PCM1691」、「PCM1789」の4製品。PCM3168AのA-Dコンバータはサンプリング周波数が最大96kHz、分解能が24ビット。PCM3168AのD-Aコンバータ、ならびにPCM1690/1691/1789はサンプリング周波数が最大192kHzで分解能が24ビットである。各製品の概要は表2に示すとおりだ。


表2 日本TIのコーデック/D-Aコンバータの仕様/価格 表2 日本TIのコーデック/D-Aコンバータの仕様/価格 
図3 カレントセグメント方式D-Aコンバータの出力波形 図3 カレントセグメント方式D-Aコンバータの出力波形 (a)は従来製品の17レベル出力、(b)は新製品の33レベル差動出力。実使用時には、ポストフィルタを通すことで高周波成分を除去し、高精度なアナログ信号(きれいな正弦波)を得る。

 4製品の特徴は、D-Aコンバータの変換方式として、同社が従来から採用している「カレントセグメント方式」を改良して、高性能化を図ったことである。同方式は、ΔΣ変調器からのデジタル出力を、低ビットに重み付けされたアナログ信号に変換する仕組みとして、複数の定電流源を組み合わせる形をとっている。同社の従来品では、3次ΔΣ変調回路と組み合わせて17レベルのアナログ出力を得ていた。それに対し、新製品では4次ΔΣ変調回路と組み合わせて33レベルのアナログ出力を得る方式とした(図3)。従来の方式では、D-AコンバータのS/N比は105dB程度であったが、表2に示したように、それぞれ111dB〜113dBに改善されている。同社によれば、「定電流源を増設して33レベルとすることで、S/N比やダイナミックレンジが改善し、PSRR(電源変動除去比)やジッター耐性も高まった」という。

 同社がカレントセグメント方式を採用している理由は、「スイッチドキャパシタ方式と比較して、(データシートに記載される単一周波数の信号に対するスペックではなく)実際の音声/音楽再生時における聴感上の音質が良い」ことだという。なお、ΔΣ変調器と定電流源のブロックの間には、DEM(Dynamic Element Matching)回路が配置されており、定電流源のばらつきを補正するといった工夫も施されている。

 いずれの製品も、すでに出荷中である。また、PCM3168Aについては車載オーディオ機器に対応した温度拡張(105℃まで)品も7.1米ドル(1000個購入時の参考単価)で供給中だ。

 併せて、日本TIは2008年11月に、オーディオ機器用のステレオコーデックIC(A-D/D-Aコンバータ)「TLV320AIC3254」の量産出荷を開始している。この製品は携帯電話機、ポータブルナビゲーション機器、ポータブルメディア機器など、低消費電力であることが求められる用途をターゲットとする。

 TLV320AIC3254は、ステレオのA-D/D-Aコンバータ、2個のオーディオ信号処理用DSP「miniDSP」を内蔵している。A-D/D-Aコンバータの分解能は最大24ビットで、DSP部の語長は32ビット。最大3.6Vまでの単一電源動作を可能とする2個のLDO(低ドロップアウト)レギュレータを内蔵しており、標準では、1.8Vの電源電圧で動作可能である。アナログ部の電源電圧範囲は1.5V〜3.6Vで、デジタル部は1.26V〜3.6V、I/O部は1.1V〜3.6Vとなっており、LDOを使わず、個別に給電することもできる。また、ステレオヘッドホンアンプ、マイクロホン用の2個のプログラマブルゲインアンプ、小数分周PLL、アナログ入力マルチプレクサも内蔵している。サンプリングレートは最大192kHz、D-AコンバータのS/N比は100dB、A-DコンバータのS/N比は同93dB。

 TLV320AIC3254の特徴の1つは、同社が「PowerTune」と呼ぶ消費電力の最適化技術を採用していることである。機器の各種動作モードに応じて、チップ内部の消費電力とS/N比のバランスをとることで、電池の寿命を延伸することができる。例えば、消費電力に制約のあるケースでは、TLV320AIC3254のS/N比を90dBのレベルに設定することで、ステレオ再生時(D-Aコンバータが稼働)の消費電力を2.4mWまで低減できる(マイクロホンアンプを選択した場合の無音時の値)。一方、消費電力を5.1mWまで増加させると、100dBのS/N比を実現できる。この機能は、主にアナログ部の電源電圧を変化させることで実現しているという。

 TLV320AIC3254のパッケージは5mm×5mmの32端子QFN。動作温度範囲は−40〜85℃。1000個購入時の参考単価は5.45米ドル。

デジタル入力型のD級アンプ、信号特性の補正機能が鍵に

図4 DAE-xを利用する場合のアンプの構成 図4 DAE-xを利用する場合のアンプの構成 

 米Intersil社もオーディオIC市場に本格的に参入した。同社は2008年7月にオーディオ用D級(クラスD)アンプの専業メーカーである米D2Audio社を買収していた。この買収により、D級アンプ製品「DAE-1/2/3(以下、DAE-x)」がIntersil社の製品ラインアップに加わった。DAE-xは、フラットパネルテレビ、メディアパソコン、車載オーディオ機器、ポータブルオーディオプレーヤなどの用途をターゲットとしている。

 オーディオ用のD級アンプには、大きく分けて2つの方式がある。1つはD-Aコンバータからのアナログ出力を受け取って、PWM変調をかけ直すアナログ入力型のものである。もう1つが「フルデジタルアンプ」と呼ばれる方式であり、通常であればD-Aコンバータに入力するデジタルデータ(PCMデータ)を直接受け取る。このタイプの製品では、ΔΣ変調など、通常のD-Aコンバータで行われる処理もD級アンプICが担う。DAE-xは、このフルデジタルアンプ型の製品である。

 図4に、Intersil社のD級アンプIC製品を利用する場合の構成図を示した。DAE-xの信号パスは、デジタルオーディオインターフェース、サンプルレートコンバータ、DSP、PCM-PWMコンバータ(ΔΣ変調やPWM変調を行う)で構成される。これに外付けのレベルシフター/ドライバ、パワーMOSFET、出力フィルタを付加してアンプを構成する。DAE-xは、後段の回路にはほぼ依存せず利用できる。すなわち、アンプ全体としての出力電力やパワーMOSFETの仕様は大きな制約にはならない。また、内蔵するDSPにより、イコライザなどの音声効果処理やスピーカシステムに対する最適化処理などをプログラマブルに行える点も特徴の1つだ。

 D級アンプでは、電源の変動やノイズによって、PWM出力が理想的な矩形波からずれることにより音質が劣化する。DAE-xには、こうした音質劣化を抑えるための2系統の回路が設けられている。1つは、外付けの出力フィルタからの信号をフィードバックして、補正をかける系である。フィードバックされた信号をA-Dコンバータによってデジタル化し、理想状態からのずれ分をデジタル信号処理によって補正するという。この補正は、PCM-PWMコンバータ部で行われ、1つ後のサンプル周期で処理される。例えば、EMI(電磁干渉)への対策としてPWM波形の立ち上がり/降下をなまらせても、それによる理想状態からのズレ分をデジタル処理で補正するといったことが実現できるという。

 もう1つは電源電圧の変動をモニターして補正をかける系である。電源電圧の変動分をA-Dコンバータによってデジタル化し、デジタル処理で補正をかける。こちらは、DSPで補正を行った上でPCM-PWMコンバータ部に補正後のデータを送る形になる。こうした機能により、0.05%の全高調波歪率と110dBのS/N比(信号対雑音比)を実現しているという。

 なお、日本TIも2008年2月にデジタルテレビ向けのフルデジタルアンプ「TAS5706」を発表していた。この製品も、DAE-xのフィードバック機能と同様の補正機能を備えているが、A-Dコンバータを用いることによるコスト増を抑えるために、比較的低コストな手段でこの機能を実現しているという。パワーアンプ部の出力とその前段のPWM回路出力の比較を行い、差分を制御系にフィードバックするという基本的な仕組み以外は明かしていない。

(飴本 健)

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