今回はGaNパワー半導体の基本特性やSi、SiCとの性能比較、用途ごとの住み分け、設計時の注意点について説明します。
本連載はリョーサンが運営するマガジンサイト「リョーサンテクラボ」に掲載された記事を転載しています。本記事は2024年5月29日に公開されたものです。
従来はシリコン(Si)パワー半導体が主流で、多くの電子機器や産業機器に使用されてきましたが、デジタル技術の急速な発展に伴って、より高性能で高効率な半導体が世界中で求められています。そこで、次世代パワー半導体として炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が注目を集めています。
本記事では、GaNパワー半導体の特性やSiCとの住み分け、設計上の注意点などを解説していきます。
GaNとは半導体の材料となる化合物です。GaNパワー半導体は高速スイッチング・高耐圧の特徴を持っており、特性を生かした設計をすることで製品の小型化・高性能化が実現できます。そのため、電源・インバーターのキー部品としても注目されています。皆さんの身の回りに、従来品と比べて小型・軽量なアダプターを見かけたら、それはGaNパワー半導体による技術革新の成果かもしれません。
小型、高性能な電源/インバーターを実現するために必要な特性と効果
・動作速度の高速化:高速スイッチング動作によるコイル・トランスの小型化
・高耐圧での耐久性:高電圧化による配線面積低減などによる小型化
・低電力損失化:低損失化による放熱部品(筐体・ヒートシンク)の小型化
パワー半導体の性能は、使用される材料によって大きく異なります。これは、各材料が持つ物理的な特性が異なるためであり、導電性や耐圧性、熱伝導性などが性能に直接影響を与えます。こうした材料毎の性能差を評価するために用いられる指標として「バリガ性能指数」があります。
バリガ性能指数
バリガ性能指数は、Siに対する半導体物質の性能を表す指標であり、Siを基準値1とした相対値で表現されています。また、数値が高いほどパワー半導体に適した材料であることを示しています。
※バンドギャップ:材料の絶縁性や熱的安定性に関係し、間接的に高耐圧設計に寄与する
※電子移動度:キャリアの移動速度に関係し、高速動作や高周波応答に寄与する
※絶縁破壊電界強度:半導体がどれだけ高い電界に耐えられるかを示す指標であり、高耐圧設計に寄与する
GaNはSiと比べて、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍と高く、総合的な性能指数(バリガ性能指数)としてはSiCが500、GaNが930と圧倒的に高くなります。つまり、同じ耐圧条件下でGaNを用いれば、Siの930分の1のオン抵抗で設計可能となり、効率・小型化・発熱抑制に大きく貢献します。
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