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「マイコンシェア30%達成の切り札に」――ルネサスが「RXファミリ」の第1弾を発表

» 2009年03月26日 00時00分 公開
[EDN Japan]

 ルネサス テクノロジは2009年3月、東京都内で記者会見を開催し、新型の32ビットプロセッサコアを特徴とするCISC(Complex Instruction Set Computer)マイコン「RXファミリ」の第1弾製品として、「RX610グループ」を発表した(写真1)。RX610グループは、最大動作周波数が100MHzで、主に高性能のOA機器やデジタル民生機器の用途に向ける。2009年6月にサンプル出荷を開始し、2010年前半から月産10万個で量産を立ち上げる。2011年中には月産100万個の規模に成長させる計画である。1万個発注時の単価は、プログラム格納用のフラッシュメモリーを上限である2Mバイト搭載する「RX6108W」の場合で960円。


写真1 ルネサステクノロジの「RX610グループ」 写真1 ルネサステクノロジの「RX610グループ」 
写真2 ルネサステクノロジの水垣重生氏 写真2 ルネサステクノロジの水垣重生氏 

 ルネサスは2007年5月から、16/32ビットのCISCマイコン市場をカバーする新アーキテクチャとして、RXコアの開発を進めてきた。2008年5月には、同コアを使った高速/高性能の32ビットマイコン製品群を「RX600シリーズ」として展開することを発表している。同社の業務執行役員でマイコン統括本部副本部長を務める水垣重生氏(写真2)は、「当社が38%と世界トップのシェアを持つ16ビットマイコンの顧客は、今後のマイコンの新製品に対して、機器の高性能化に対応するための高い処理能力とともに、より少ない消費電力も求めている。RXファミリは、顧客からのこうした要望に応える性能を備える製品だ。また、当社が展開してきた16/32ビットのCISCマイコン4製品を統合する次世代マイコンでもある。当社は、マイコン全体での世界シェアを、現在の21%から30%にまで引き上げることを目標としている。RXファミリはその切り札だ」と強調する。

 今回発表したRX610グループは、高速/高性能に重点を置いたRX600シリーズの第1弾製品となる。RX600シリーズについては、2010年3月までに、通信系の機能を強化した製品と、モーター制御の機能を強化した製品を投入する予定だ。また、消費電力の低減を追求した製品群である「RX200シリーズ」については、発表時期を明かさなかったものの、「そう遠い時期ではない」(水垣氏)とした。

100MHzでノーウェイトアクセス

 RX610グループは、90nmプロセスで製造される。最大動作周波数は100MHzで、処理性能は約1.65MIPS/MHz(1MIPSは1秒間に100万回の命令を処理する能力)。つまり最大処理性能は165MIPSである。100MHz動作時における消費電流は50mAで、ルネサスの既存のCISCマイコンと比べて約1/2となっている。また、用途に応じて4つの低消費電力モードを選択できる。例えば、機器のスタンバイ状態で用いる「ディープソフトウエアスタンバイモード」の場合、消費電流は約3μAまで低減できる。

 内蔵メモリーは、SRAMが128Kバイト、フラッシュメモリーがプログラム格納用で最大2Mバイト、データ格納用で32Kバイトとなっている。この内蔵フラッシュメモリーは、ルネサスが独自に開発したMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Silicon)型のものである。プロセッサコアと同じ100MHzで動作し、ノーウェイトの1サイクルアクセスが可能だ。例えば、アクセス速度が30MHzのNOR型フラッシュメモリーを100MHz動作のマイコンに搭載した場合、3サイクル以上のウェイトサイクルが必要になる。それに対し、「MONOS型フラッシュメモリーを採用することにより、100MHzまでの動作周波数では、動作速度に比例して処理性能を向上させることが可能だ」(ルネサス)という。

 RXファミリは、同社の16/32ビットCISCマイコンである「H8S」、「M16C」、「H8SX」、「R32C」の顧客が、それぞれをRXファミリに置き換えやすくするために、4製品の持つ周辺機能を内蔵している。それにより、物理層の互換性を高めた。RX610グループでは、16ビットタイマーパルスユニット、16ビットコンペアマッチタイマー、8ビットタイマー、データトランスファコントローラ、シリアルコミュニケーションインターフェース、10ビットA-Dコンバータ、10ビットD-Aコンバータ、CRC(巡回冗長検査)演算器などを搭載している。これらのうち、A-Dコンバータについては、変換速度を1μsに高速化するなど機能を強化している。新たにI2Cバスインターフェースも内蔵した。

 また、既存4製品との互換性を高めるために、従来と同様に「ルネサス統合開発環境」により開発全般をサポートする。加えて、既存4製品向けに作成したプログラムをRXファミリに容易に移植できるように、ルネサス統合開発環境の中に、新たにRX用のCコンパイラを追加した。さらに、RX610グループ専用のハードウエア開発環境として、トレース機能なしのオンチップデバッギングエミュレータ「E1」、トレース機能ありのオンチップデバッギングエミュレータ「E20」、大規模開発で用いるインサーキットエミュレータ「E100」の3種類を開発中である。E1とE20は2010年10月に、E100は2011年前半に投入する予定だ。価格は、E1が1万5000円、E20が8万円、E100が50万円となっている。

(朴 尚洙)

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