今回は、電気と磁気の関係について解説します。また、自分自身からのノイズで機械の誤動作を引き起こす事象なども紹介します。
前回は、EMCとは電磁環境を扱う工学だということをお話ししました。この電磁、または一般に電磁気といわれていますが、この中には電気と磁気の2つが含まれています。英語でもElectromagneticという1つの単語になっていますが、2つの単語がつながったように見えます。これだけでも、電気と磁気には密接な関係がありそうです。
身近なものでいうと、例えば電気ならば照明などがあり、磁気ならば磁石があります。これらは直接的には関連性はないように思えますが、さらによーく辺りを見回してみると、モーターというのがあります。
モーターは電気を流すと回転する機器ですが、その原理は確か、小学校か中学校の理科で皆さん学ばれたかと思います。磁石と電気の作用をうまく利用したのがこのモーターという機器です。
それにしてもこの電気はどこから来たのでしょうか? 実は、私たちが使用している電気は自然には手に入りません。身近には電池がありますが、ほとんどの電気は発電所で発電されたもので、それが各家庭やオフィス、工場に供給されています。
この発電機とモーターは、大まかには構造が同じで作用が逆になっています。つまり、外から回転力を与えてやれば電気を作ることができる、これが発電機です。発電機の原理は、電磁誘導作用というものを利用しているのですが、「誘導」というのは、文字通り磁気が電気を引き起こすことです。磁気から電気が誘導され電気を発生するのが発電機というわけです。
さて、ここまで、副題とあまり関係ないような話と思われたかもしれませんが、この誘導作用というのは、ノイズやEMCを理解するうえで非常に重要な要素です。この誘導作用を及ぼす範囲というのがありまして、その範囲を「場」といいます。電気の場を「電場」、磁気の作用の及ぶ範囲を「磁場」といいます。
一方、磁場による電磁誘導とは別に、静電気による誘導作用もあります。電場、または電界は、静電気という現象で私たちは身近に感じています。昔、セルロイドの下敷きをセーターなどでこすって頭に持っていくと、髪の毛が引っ張られて浮き上がる、あれです。この電界もまた「電場」を形成し、やはり誘導作用によって影響を及ぼします。「場」とはノイズにとっては少々やっかいな対象なのです。
両方存在する場合は電磁場といいます。この「場」という概念は電磁気に限らず、重力場とかほかの物理作用にも登場する、非常に重要な概念です(電場は電界、磁場は磁界ともいわれます)。
さて、前回でも少し触れてましたが、この「場(Field)」というのは電気が流れる(電流)と必ず磁気が発生します。ここでの磁気は磁場の発生を指しています。私たちが使う電気機器は当然、電気を使っています。従って、必ず磁場が発生しているのです。詳細はほかの解説書などをご参照いただくとして、この「電流=磁場の発生」は切っても切れない関係にあるのです。
さて、冒頭の電磁気ですが、このように電気と磁気は切っても切れない関係なので、電磁気という1つの概念で理解することが理解しやすいのではと思います。電気機器などを使用すると、必ず電場や磁場が発生しており、それらが場合によってはノイズというレベルでほかに干渉してくることがあります。
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