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意外に手ごわい「ダイオード」Wired, Weird(1/2 ページ)

一言でダイオードといっても、回路全体を見渡して用途に応じたものを使わなくてはならない。回路保護用ダイオードを例に、使い方を示した。

» 2009年11月01日 00時00分 公開
[武田 英夫EDN Japan]

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回路保護用のダイオード

 ある日、コイル式リレー用のドライバICが故障したので、原因を調査してほしいとの依頼があった。それまで何枚も使っている基板だったのだが、初めて故障したということであった。

 図1に示すのが、問題となっていた回路である。ドライバICを実装した基板とリレーを実装した基板をケーブルでつなぐ構成となっており、ドライバICとしては「ULN2803A」を使用していた。この製品は、誘導性の負荷であるリレーによって生じる逆起電力の影響を防ぐためのダイオードを内蔵している。


図1 ドライバICが壊れた回路 図1 ドライバICが壊れた回路 

 しかし、図1の回路ではそれを使用せず、リレー側の基板で整流用のダイオードD1を使っていた。このダイオードは壊れておらず、ドライバICのみが故障していた。本来は、ドライバICが備えるダイオードを使い、リレーはドライバICの近くに配置すべきである。しかし、図1の回路は長いケーブルで基板間をつなぐ構成となっており、電気的に問題があった。

 筆者は、ドライバICのダイオードコモン(10番端子)をコネクタ経由でリレーの電源につなぎ、さらにその配線とグラウンドとの間にコンデンサを追加することで急場を凌いだ。コンデンサを追加したのは次のような理由からである。リレー側から発生した高電圧がドライバICに加わった場合、ダイオードコモンを通じて放電される。しかし、この基板の構成では、リレーの電源までの距離が長いので、速やかには放電されない。そこで、ドライバICの近くにコンデンサを配置することにより、電荷の流れ先を確保したのである。

 このときは、回路図と基板を渡されただけで、実験を行って調べられる状況ではなかった。そのため、故障の原因については想像するしかないのだが、逆起電力の影響を防止するために整流用ダイオードを使ったことに問題があるのかもしれない。整流用ダイオードは高速性に乏しく、逆起電力を吸収できないのではないだろうか。

図2 根本的な対策を施した回路 図2 根本的な対策を施した回路 
図3 リレーの接続方法 図3 リレーの接続方法 

 確かに整流用ダイオードならば、耐電圧/耐電流ともに大きく頑丈な感じがする。一方、ドライバICが内蔵するダイオードは貧弱なものにも思える。しかし、ダイオードが許容できなければならないのはリレーに流れる電流であり、逆耐電圧として要求されるのはリレーの電源電圧である。実際の設計では、これらに安全率を見込んだ値を用いる。

 ところで、図1の例の場合、本来はどのような構成にするのがよいのだろうか。図2に示したのが、根本的な対策を施した回路である。図1と同様の基板構成であり、リレー用の基板には、ロジック回路は搭載していない。リレーの電源とドライバICのグラウンドがつながるパスがあると、不要な回り込みが生じてトラブルの原因になる。ここは絶縁すべきだ。ダーリントン接続のフォトカプラやフォトFETは出力電流容量が大きい。そのため、これらを使えばリレーを直接駆動することができ、部品点数を削減できる。

 リレーに付加するダイオードD1としては、整流用ではなくスイッチング用のものを使用する。古い言葉で言えば、検波用ダイオードだ。

 リレーの製品カタログを見ると、鉄芯が接地されている場合には、リレーの電食(コイルが電気的に腐食すること)が起きないように、図3(a)のように接続するのではなく、図3(b)のようにすべきだと書かれている。フォトカプラ、フォトFETなどを使えばドライバICの出力が絶縁されるので、どちらの方法でも接続できる。その点でも都合が良い。

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