昔懐かしのプロセッサを取り上げ、その歴史をたどる本連載。今回は、20年近く前に生産が終了しているにもかかわらず、今なお使われている「Intel 8051」を取り上げる。
アーキテクチャとしてはまだ現役だし、互換プロセッサが山ほど世の中にある「8051」だが、本家Intelは2007年3月に受注を終了し、とっくにEOL(End of Life)になっているという意味では、一応懐古録に入れて良い製品かと思う(図1)。
8051を語るためには、その前モデルである「Intel 8048」から話を始める必要がある。CHM(Computer History Museum)の"Oral History Panel on the Development and Promotion of the Intel 8048 Microcontroller"によれば、Intelが「4004」の後継である「4040」の出荷を開始した1974年頃、Texas Instruments(TI)は「TMS1000」を10米ドルという非常に安価な価格で提供し始めており、またMostekも「Mostek 3870」のアナウンスを始めていた(製品投入は1977年)
TMS1000は4bitのCPU、一方Mostek 3870は8bitのCPUであるが、どちらにも共通したのが1チップで構成されていたことだ。4040は4004の欠点をいろいろつぶして性能を引き上げていたが、システムを構成するのには複数のチップを組み合わせる必要があり(図2)、システムが大規模になりがちだった。一方、TMS1000は1KBのMask ROMと64Nibble(32Bytes)のRAM、最大23pinのI/O端子とOn-Chip Oscillatorまで搭載していたから、電源さえ供給してやればそのまま利用できた(図3)
Mostek 3870は、もともと「Fairchild 3850」(CPU)と「Fairchild 3851」(Program Storage Unit)と2チップだった製品を1チップ化した上、5V単一電源で動作するようにした。64ByteのScratchPad(要するにRAM)に加え、0〜4KBのMask ROM(後にEEPROM版も追加)を搭載しており、こちらも最小構成は本当に1チップで済む。Intelは、こうしたワンチップで完結する、後で言うところのMCUに相当する製品が必要、と判断したようだ。そこからいろいろ市場調査をしたり、検討を重ねたりして最終的に
といった特徴が定まる事になる。ちなみに当時Intelは「2708」というUVEPROMを既に持っていたが、これは3電源(+5V/-5V/+12V)が必要なもので、これに続く5V単一電源のEPROMを開発中だった。なのでこの新しい製品は(開発難易度の高い)EPROM版を先に手掛け(これがIntel 8748)、次いでMask ROM版(Intel 8048)を手掛けるという順で開発が行われた。
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