最新の電子機器には載らないものの、昔懐かしのプロセッサはホビー用途などでひそかに息づき、エンジニアたちの「遊び心」をくすぐっている。本連載では、そんな「いにしえ」のプロセッサを取り上げ、紹介していく。まずはDEC(Digital Equipment Corporation)が開発し、28年もの長きにわたり生産された「PDP-11」を取り上げる。
DEC、正式にはDigital Equipment Corporationは1957年創業のミニコンメーカーであり、1992年にCOMPAQに買収されるまでの35年間にいろいろな影響をコンピュータ業界に及ぼしたメーカーである。そんなDECの代表的な製品の一つと言えるのが、1969年に登場した「PDP-11」だ。16bitのミニコンピュータであり、シリーズ最後の「PDP-11/93」「PDP-11/94」は1990年に登場、生産終了はCOMPAQ時代の1997年となっている。実に28年もの間生産されたアーキテクチャであり、1978年に「8086」でスタートして2007年の「80186」の生産終了まで続いた16bit x86(29年)にはやや及ばないものの、16bitアーキテクチャとしてはかなり長寿な方である。
ただ16bit x86に関してはいまだに80186互換のプロセッサがサードパーティーから提供されている(あとセカンドソース供給もあるし、製造サプライヤーサービスからの提供品もある)のに対し、PDP-11に関してはDECからの提供のみだったというのが大きな違いであり、なのでDECが製品供給を止めた事で、割とあっさりと廃れていってしまった感はある。
さてPDP-11であるが、28年間も供給されたこともあって、いろいろなバージョンがある。表は主要なPDP-11のラインアップと、これに搭載されているCPUをまとめたものである。
ここでグリーンの製品は、Discrete ICを利用したCPUを利用した製品、イエローがLSIを利用した製品となる(PDP-11/44のKD11-Zについては後述)。最初に登場したPDP-11/10・20はKA-11というCPUボードを利用しているが、その概略図はこんな感じ(図1)。実際にはこれをTTLを利用して構成している関係で基板のサイズはかなり大きかった。もっとも、利用しているUNIBUSというシステムのバスも、アドレス/データ共に16bit幅(アドレスはのちに18/22bit)で、かつ制御信号やら電源やらも加わり、72bit幅のバスになっており、結構な横幅があったからこれは問題にはならなかった。そもそもPDP-11/20の本体(図2)自体が結構な大きさ(10.5×19×24inch:26.7×48.3×61.0cm)だった。これでも当時では「ミニ」コンピュータの扱いだったわけだ。
ちなみにPDP-11/10とPDP-11/20の違いはメモリと周辺装置で、PDP-11/10は2KB ROM+256Bytes RAMと最小限のコンソールだが、PDP-11/20は8KB RAMを搭載(ROMは無し)し、ASR-33テレタイプがコンソールとして付属している。拡張メモリは2KB ROMが1500米ドル、8KB RAMが3500米ドルだが、このROM/RAMともにコアメモリというのが時代を感じさせる。
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