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モバイルテレビ向けLNAの設計バイパス機能で強電界入力に備える(4/4 ページ)

» 2010年04月01日 00時00分 公開
[Chin-Leong Lim (米Avago Technologies社),EDN]
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特性の確認

図7 LNAモードおよびバイパスモードの評価結果 図7 LNAモードおよびバイパスモードの評価結果 (a)は利得の周波数依存性、(b)はIRL/ORLの周波数依存性を表している。

 前掲の表3には、「実際の測定値」として、このプロトタイプの評価結果も示してある。各項目を見ていくと、まず図7(a)のように、通常動作時のLNAの利得は19.8dB以上で、想定周波数範囲内の変動は1.3dBであった。周波数応答は、DCカット用キャパシタC2で200MHz以下の信号を減衰させることで平坦化されている。周波数の上限での利得ロールオフは、MMICの特性と、バイアスがオフのときのPINダイオードの寄生容量による負帰還で決まる。

 バイパスモード時には、全周波数範囲で−3.8dB〜−4.5dBの減衰を実現する(図7(a)の青いプロット)。このモードでの損失は、主にPINダイオードに直列に存在する寄生インダクタンスによって生じる。プリント基板での損失、FET端子のインピーダンス、およびR4に並列に存在する寄生キャパシタンスも、わずかながら損失に影響を及ぼす。しかし、その影響が加わっても、想定した特性要求である−5dBには達していないので、さらなる改良は施さなかった。

 また、バイパスモードでは、IRL/ORLともに想定周波数範囲内で−17dB程度と良好であった(図7(b))。これらのパラメータは、主に、バイアスをオフにした際、FETのゲートとドレインがどれだけオープンに近いかに依存する。LNAの動作中のIRLとORLは、いずれもわずかに不足し、最低周波数ではORLが−7dBとなった。70MHz以下でのORLの低下は、C2の値が小さいことに起因して起こる。これは、周波数応答を平坦化することとのトレードオフとなる。

図8 LNAモードの評価結果 図8 LNAモードの評価結果 (a)はL1がある場合とない場合の雑音指数の周波数依存性。(b)はLNAモードでの利得、IIP3/OIP3の周波数依存性を表している。

 図8(a)は、フェライトビーズインダクタL1を使用しているプロトタイプと、使用していないプロトタイプについて、LNAの雑音指数を比較した結果である。先述したように、L1がない場合には、目標とする雑音指数の仕様(F<1.3dB)を満たすことができないことがわかる。2つの条件について比較検討してみた結果、R3の寄生容量による信号損失が0.3dB〜0.6dB存在し、これによって雑音指数が同じだけ増大したと推測された。また、L1を使用している場合のほうが、帯域内の雑音指数の変化が大きい。ただ、これは特に重要なパラメータではないので、改善は行わなかった。L1を付加した場合の雑音指数における大きな変化は、高い周波数、特にメーカーが提供する性能グラフから推定される100MHz以下の自己共振振動数(SRF:Self-Resonant Frequency)より上で、徐々に低下するフェライトビーズのチョーク能力によって生じると推測される*15)

 LNAのOIP3(3次出力インターセプトポイント)は、−20dBmの2波入力電力レベルを使用し、モバイルテレビの帯域内において離れた周波数ポイントを複数選んで測定した。IIP3は、OIP3のデータから利得の測定値を減算することによって求めた。その結果、OIP3は30.3dBm以上で、帯域内の最大変化は0.8dBとなった(図8(b))。データシートの公称値20dBm*10)を約10dB超える線形性の改善は、高いIds(30mA)によるものである。


 本稿で述べたように、pHEMT MMICとPINダイオードを組み合わせて使用することで、モバイルテレビ受信機用のバイパス機能付き広帯域LNAを実現することができた。また、本稿で例にとったFETの場合、Idsを公称値の3倍にすることで、入力整合が不要になる程度までIRLを改善できることもわかった。なお、LNAの雑音指数をさらに改善したい場合、フェライトビーズインダクタを、よりSRFが高い値のものと置き換えてもよいだろう。


脚注

※10…Avago Technologies application note 1049, "A Low Distortion PIN Diode Switch Using Surface Mount Devices," http://www.avagotech.com

※15…Murata product specification, "BLM18R Series (0603 Size)," Available: http://www.murata.com


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