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抵抗の基本、選択のポイント抵抗/コンデンサ/コイルの基本を学ぶ(2)(3/3 ページ)

» 2011年02月01日 00時00分 公開
[河合一EDN Japan]
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アプリケーションに応じた抵抗の選択

 続いて、アプリケーションの種類ごとに、どのような抵抗を選択すればよいのか、ポイントを簡単に説明する。

  • 小電力の汎用回路

 小電力の汎用回路(アナログ、デジタルとも)では、一般に、抵抗値の精度/温度依存性に対する要求仕様は高くない。そのため、リード型、面実装型ともに、コスト面も考慮して炭素皮膜抵抗が最適な選択肢となる。

  • 高精度のアナログ回路

 高精度のアナログ回路では、高精度のリニア/アナログICの特性が重要な要素となる。ただ、本連載の第1回目に説明したとおり、外付け部品、特に抵抗の精度が直接的に回路全体の精度に影響する場合もある。例えば、オペアンプICを用いたアナログ演算回路(増幅、加算、減算などの演算に用いる回路)では、外付け抵抗の精度が回路の精度を決める。ゲインやオフセットなどの初期誤差は補正することが可能だが、温度特性は調整できないので、温度特性に優れた金属皮膜/箔抵抗が最適な選択となる。

 また、A-D/D-A変換回路においては、非直線性誤差(リニアリティ誤差)が問題となる。例えば、分解能が12ビットのA-D/D-A変換の理論精度は±0.012%であるが、0.01%精度の抵抗は市販されていないし、必要ともされない。これは、抵抗値の精度が高くなくても、直線性が高ければ問題ないからである。抵抗自身の非直線性誤差については特に規定されてはいないが、一般に、少なくとも0.01%未満、実力値として0.000X%オーダーと極めて非直線性誤差は小さい。

  • 電力回路
図7 電源回路における抵抗の使用例 図7 電源回路における抵抗の使用例

 ひと言で電力回路といっても、その種類は多岐にわたる。電源系、電力出力系に大別できるが、電源/電源制御においては、安全規格との関係についても検証しなければならない。図7に、最も簡単な電源回路における電流制限抵抗の使用例を示す。電源(電力)の規模にもよるが、電源スイッチをオンにすると、通常時の10倍程度の突入電流が生じる。この突入電流を制限するために、整流回路には電流制限抵抗が用いられる。この用途では、抵抗値の精度よりも、定格電圧、定格電力が重要となり、負荷軽減特性の確認が必須となる。さらには、難燃性であることも求められる。こうした用途には、巻線抵抗、セメント抵抗が最適である。

便利な抵抗製品

 抵抗は一般的には単体で用いられるが、ダンピング用途やプルダウン/プルアップ用途では、4個〜24個の抵抗を内蔵した抵抗ネットワーク製品が便利である。

図8 抵抗ネットワークの利用例 図8 抵抗ネットワークの利用例

 また、高精度の回路では、金属箔/チップ抵抗ネットワークが重宝する。ここで取り上げるのは、単一のパッケージに2本の抵抗を内蔵したタイプの製品であり、その最大の特徴は優れた温度トラッキング特性を備えることにある。ペアの抵抗値の絶対精度、相対精度ともに0.05%と高く、温度特性も±5ppm/℃〜±15ppm/℃の優れた特性を有している。応用例としては、オペアンプを使用した差動増幅回路が挙げられる。図8(a)の回路では、入力側に抵抗値Aの抵抗ネットワーク、帰還側に抵抗値Bの抵抗ネットワークを用いてゲインG=B/Aを実現している。図8(b)の回路では、同一抵抗値の抵抗ネットワークを反転側、非反転側のそれぞれに用いており、ゲインG=1の差動増幅回路を構成している。いずれの場合も、4本の抵抗で構成するより簡単に、高い精度、高い温度特性を実現可能となる。

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