村田製作所は、「積層セラミックコンデンサの音鳴き」への対策手法の効果を、「TECHNO-FRONTIER 2011」(2011年7月20日〜22日、東京ビッグサイト)で、デモを通してアピールしていた(図1)。
音鳴きとは、回路基板がわずかに振動し、人間に聞こえる可聴音を生み出してしまう現象である。積層コンデンサに交流電圧を印加するとコンデンサそのものが伸縮し、結果として回路基板を面方向に、まるでスピーカのように振動させる。回路基板の振幅幅は1p〜1nmとごくわずかだが、振動の周期が人間の可聴周波数帯域(20〜20kHz)に一致したとき、音として聞こえてしまう。コンデンサが伸縮してしまうのは、材料として使われている強誘電体セラミックスの「電歪効果」が原因で、わずかな伸縮の発生自体を避けることは難しい(関連記事)。
音鳴きは、昔から知られている現象で、現象そのものは何ら新しくない。しかし、今だなお考慮する必要のある、古くて新しい問題だという。電解コンデンサの置き換えを狙い、積層コンデンサの大容量化が進められているからだ。大容量化するために、高誘電率材料を採用すると、コンデンサに蓄えられるエネルギ量が増え、振動しやすくなってしまうのだという。
音鳴きの発生の有無を決める回路基板の固有振動数は、コンデンサを置く場所や、回路基板の寸法、厚み、層数、グラウンド配線のパターンといった非常に多くの条件で決まり、あらかじめ予測することは難しい。従って、「音鳴きが発生してしまったときには、各企業の設計思想にもよるが、採用するコンデンサそのものを変えてしまうことを提案している」(同社)という。
会場では、積層コンデンサの汎用品「GRMシリーズ」とともに、低誘電率の独自材料を使い、コンデンサそのものの振動を抑制した「GJ8シリーズ」、回路基板にコンデンサの振動が伝わらない構造を採用した「KRMシリーズ」を、同一の回路基板に実装し、これら2つの音鳴き対策品の効果を音として聞かせるデモを見せた(図2)。コンデンサに印加する交流電圧の周波数を幅広い範囲で変えたときにも、対策品を使えば、音鳴きが発生していないことをアピールしていた。
この他、村田製作所のブースには、電解コンデンサから積層セラミックコンデンサへの置き換えを提案するデモもあった。
一般に、DC-DCコンバータのリップルを抑制する出力コンデンサには、電解コンデンサが広く使われている。大容量で安価な品種がそろっているからだ。村田製作所では、電解コンデンサから同社の高分子コンデンサや積層セラミックコンデンサに置き換えたときにも、十分にリップルを抑制できることを見せていた(図3)。「積層セラミックコンデンサには、製品寿命が長く、小型であるという特徴がある。最近では、DC-DCコンバータのリップル抑制コンデンサを対象にした大容量の積層セラミックコンデンサを用意している。大容量の積層セラミックコンデンサを使えば、十分にリップルを抑制しつつ、回路基板を小型化できる」(同社)。
周波数にも依存するが、積層セラミックコンデンサは他のコンデンサに比べて等価直列抵抗(ESR)が小さい。従って、静電容量が若干が小さくても、十分にリップルを抑制する効果が得られると主張する。「周波数が高くなるほど、ESRの観点で積層セラミックコンデンサが有利になる。最近、DC-DCコンバータのスイッチング周波数が高くなっており、電解コンデンサから積層セラミックコンデンサへの置き換えが進むと考えている」(同社)。
(前川 慎光)
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