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ARM vs. Intel:プロセッサアーキテクチャの覇権はどちらの手に?(後編)技術革新を生み出す果てなき闘争(1/4 ページ)

ARMとIntelによるプロセッサアーキテクチャの主導権争いでは、多数のライセンシー企業が参加しているARM陣営の動きが活発である。後編では、前編のNVIDIAに続いて、Texas Instruments、Apple、Qualcommなど、有力なARMライセンシー企業の取り組みを紹介する。

» 2011年10月04日 11時48分 公開
[Brian Dipert,EDN]

ライセンス形態で変わる製品開発

 前編でも述べたように、ARMのライセンス形態には、一般ライセンスとアーキテクチャライセンスがある。他社製品に対する差別化や性能向上を図る上では、拡張性の大きいアーキテクチャライセンスの方が有利な点が多いように見える。しかし、一般ライセンスだからと言って差別化が不可能なわけではない。例えば、Intrinsityが提供するダイナミックロジック技術/信号符号化技術である「Fast14」を用いるという手法がある。Samsung Electronicsは、同社の「Cortex-A8」を搭載するSoC(System on Chip)「Hummingbird」に適用するために、IntrinsityからFast14のライセンスを取得している。

 ただし、Intrinsityは2010年にAppleによって買収されている。Fast14はAppleのCortex-A8をベースとしたSoC「A4」に実装された。Fast14によって、AppleとSamsungのSoCは、同じプロセス技術でありながら、ほかのCortex-A8の一般ライセンシー企業よりも大幅に高い動作速度を実現することができた。なお、SamsungはA4のファウンドリでもある。

 一方、アーキテクチャライセンスを所有するQualcommは、ARMのプロセッサIP「Cortexファミリ」の命令セットである「ARMv7」に準拠する「Scorpion」を開発した。Scorpionは、携帯電話機の中核を成すアプリケーションプロセッサとベースバンドプロセッサのうち、アプリケーションプロセッサ向けとなっている(別掲記事『アプリケーションとベースバンド』を参照)。Scorpionの製造プロセスは当初65nmだったが、現在は45nmプロセスに変更されている。

 Scorpionは、2010年半ばに独自にデュアルコア化を達成した。製品としては、動作周波数が1.2GHzの「MSM8260」と「MSM8660」が発表されている(関連記事1)。Scorpionの機能は、デュアルコアであることや、「Cortex-A9」のアウトオブオーダー実行を一部サポートしていることから、ちょうどCortex-A8とCortex-A9の中間に位置すると言えるだろう。また、Scorpionを搭載するSoC「Snapdragon」には、Cortex-A8やCortex-A9と同様に、FPUとNEONが実装されている。ただし、FPUはパイプライン形式で実現されていることや、NEONの演算ビット数がCortex-A9の2倍となる128ビットになっている点で異なる。

アプリケーションとベースバンド

 アプリケーションプロセッサとベースバンドプロセッサ、これら2つのプロセッサの違いについても言及しておいた方がよいだろう。実際のところ、現在は1つのダイに両プロセッサを集積する傾向にあるため、区別して呼称することは適切ではなくなりつつある。 

 アプリケーションプロセッサは、ユーザーアプリケーションを実行し、複雑なオペレーティングシステムをサポートする他に、強力なマルチメディア処理機能を有し、Javaなどの仮想マシンをサポートし、セキュリティ機能を実装している。一方のベースバンドプロセッサは、携帯電話機用のさまざまな音声/データプロトコルを含む無線通信機能の処理を担っている。 

 アプリケーションプロセッサとベースバンドプロセッサの区別については、ARMのライセンシー企業によって見解が異なるようだ。例えば、Texas Instruments(TI)は2008年10月に、「ベースバンドプロセッサは標準化が進んだため、十分な利益が得られなくなった」として、事業撤退を発表した。一方、Qualcommは、ベースバンド処理機能をSnapdragonの大半の製品に組み込んでいる。もちろん、ベースバンド処理機能を備えていない「APQ(Application Processor Qualcomm)」シリーズもある。 

 これとは逆にNVIDIAは、ベースバンド処理機能を組み込むことでアプリケーションプロセッサのダイサイズを増えたり、技術の進展を制限したりすることは理にかなっていないとする考え方を貫いている。 

 また、ベースバンド処理機能が組み込まれていることが多い携帯電話機向けのアプリケーションプロセッサを、Wi-Fiによる通信のみをサポートするタブレット端末に搭載することはほとんど意味がないかもしれない。このことは、Hewlett-Packardのタブレット端末である第1世代の「TouchPad」が、QualcommのAPQシリーズ(デュアルコア構成で動作周波数が1.2GHzの「APQ8060」)を採用していることからも明らかだろう。


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