IDT(Integrated Device Technology)は2011年10月、周波数安定度(精度)の保証値を同社従来品の±100ppmから±50ppmに向上したCMOS発振器の新製品「3LGシリーズ」を発表した(図1)。LCタンク型のCMOS発振回路をシリコンチップに集積したタイミング信号生成デバイスである。「動作条件の全範囲にわたって±50ppmの精度を確保した。こうした高性能CMOS発振器の製品化は業界初だ」(同社)。同等の精度の水晶発振器に比べて価格や消費電力を低く抑えられると主張しており、コンピュータ機器や通信機器、民生用機器の分野で±50ppm程度の精度を求めるアプリケーションにおいて水晶発振器の置き換えを狙う。既に一部の限定的な顧客に向けて、サンプル品の出荷を始めている。
出力の形態は差動信号で、LVDS(Low Voltage Differential Signaling)とLVPECL(Low Voltage Positive Emitter Coupled Logic)、HCSL(Host Clock Signal Level)に対応する。出力周波数は24MHz〜125MHz。オフセット周波数が12kHz〜20MHzの範囲にわたる位相ジッターの積算値を1ps(rms値)以下に抑えているという。動作温度範囲は0〜70℃である。
CMOS発振器は、消費電流が小さいことを特徴とする。3LGシリーズは、無負荷時の消費電流を34mAに抑えた(LVPECL出力品で電源電圧が1.8〜3.3Vの時)。これに対し水晶発振器は、「メーカーによって異なるが、82mA〜120mAと大きい」(IDT)。3LGシリーズを用いれば、水晶発振器を用いる場合と比べて消費電力を最大75%低減できるという。価格については、具体的な価格は公表しておらず要問合せだが、同社のCMOS発振器は標準的な半導体プロセスで製造でき、大量生産する半導体製品向けのプラスチックパッケージを採用できることなどから、水晶発振器に比べて低く設定できると説明している。
パッケージについても、水晶発振器の置き換えを意識しており、一般的な水晶発振器で標準的に採用されているパッケージと端子レベルの互換性を確保した。具体的には、6端子で実装面積が7.0mm×5.0mmもしくは5.0mm×3.2mmのパッケージを用意している。
なお同社は今回、2010年に発表済みの±100ppm品「3CNシリーズ」について、量産品の出荷を開始したことも明らかにしている。
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