MHP-SAを用いることにより、大容量のリチウム(Li)イオン電池モジュールの過充電防止機能を省スペースかつ低コストで実現できる。
TE Connectivityは2012年3月、大容量リチウムイオン電池モジュールの過充電防止に利用できる保護素子「MHP-SA」を発表した。MOSFETなどのスイッチング素子と組み合わせることにより、リチウムイオン電池モジュールの過充電防止機能を、省スペースかつ低コストで実現できることを特徴とする。主に、電動スクータなどの小型電動車両や蓄電システムなどの用途に向ける。価格は要問合せ。納期は受注後12週間となっている。
同社は、復帰性を持つ保護素子(リセッタブル保護素子)であるPPTC(Polymer Positive Temperature Coefficient)素子(関連記事)とバイメタルを、1個ずつ並列に配置して1パッケージにしたハイブリッド型の保護素子「MHP」を展開している。MHP-SAでは、MHP内部のメイン配線を分岐してPPTC素子を追加するとともに、この追加したPPTC素子と外付けのスイッチング素子を接続するための端子を搭載した。
リチウムイオン電池モジュールへの充電時におけるMHP-SAの動作は以下のようになっている。まず、電池監視ICが何らかの異常(温度、電流、電圧)を検出すると、MHP-SAと接続したスイッチング素子をオン状態にする信号を出力する。次に、MHP-SAの後段に追加したPPTC素子は、スイッチング素子を経由して流れる電流によって加熱し、その熱でMHP-SA内部にあるバイメタルも加熱される。この結果、バイメタルの接点は開放状態になるので、充電を停止することができる。なお、バイメタルと並列に配置したPPTC素子は、バイメタルの接点が開放状態になったときに、バイメタルの接点間でアークが発生しないように電流を迂回させる役目を果たす。
一般的に、大容量のリチウムイオン電池モジュールで過充電保護機能を実現するには、電池モジュールの大電力に対応する保護素子や大規模な保護回路が必要である。これに対して、「MHP-SAを使えば、低電力のスイッチング素子を1個追加するだけで過充電保護機能を搭載できるので、省スペース化と低コスト化が可能になる」(同社)という。また、復帰性を備えているので、突入電流に対応するための設計マージンが不要なこともメリットになるという。
第1弾製品は、最大定格が50A/400Vの「MHP-SA50-400-M5」である。素子本体の外形寸法は、35×43×11.4mm。端子の長さは18mm。最大定格の異なる品種も開発中である。
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