周波数帯域もサンプル・レートも問題ないからといって、詰めが甘くては意味がありません。“最後の詰め”とは何なのか、いつものようにクイズを交えながら解説します。
さて問題です。小さく表示した波形は…
答えは「誤差が多くなる」です。複数の波形を画面に表示する際、波形同士が重なることを嫌い、波形を小さくして縦に並べることがあります。この場合、画面の見掛けはいいのですが、波形の正確さに欠けます。下図のように、小さく表示した波形(黒色)を拡大して、デジタル化における量子化誤差を青色で見やすく表示しました。
量子化誤差が大きく、41レベルの階段状の波形(青色)であることが分かります。波形の再現がスムーズではありませんので、その波形から測定される結果は大きな誤差を持ちます。画面いっぱいに波形を表示すれば最大で256レベルの細かい量子化ができるため、正確な結果が得られることはいうまでもありません。
問題です。画面からはみ出すように波形を表示すると……
答えは「ゆがむオシロスコープがある」です。画面の中に波形が収まることが望ましいのですが、波形の一部を正確に測定しようとしたときには、波形を画面からはみ出させることが必要になる場合があります。卑近な例では、スイッチング電源の損失計算にかかわる、飽和電圧の測定があります。
波形全体を表示したときには、飽和電圧部分はほとんど0Vにしか見えません。このような状態では、前述の量子化誤差が大きく、飽和電圧が正しく測れません。そこで下図のようにオシロスコープの感度を上げて、飽和電圧の部分が十分な大きさとなるようにします。当然この場合、波形の上部は画面からはみ出してしまいます。
ここで要注意です。波形が下図のように画面からはみ出した場合、画面内の波形が大きくゆがんでしまうオシロスコープがあります。
ゆがんでしまっては測定する意味がありません。この性能はスペックとして規定されていないことも多いため、オシロスコープの選択においては、要注意です。
観測すべき信号をオシロスコープに導くのがプローブの働きです。ほとんどのオシロスコープに受動プローブが標準で添付しており、細い形状の先端をいろいろな個所に接続できる優れモノです。ところが、この受動プローブの使用前調節(プローブ補正)を怠ると波形が変形され、大きな誤差を生じます。下図はその例です。
その結果、
上記のようになる理由はいろいろな資料に書かれていますが、要はプローブ補正の習慣を付けることが重要です。
問題です。プローブの周波数帯域は……
答えは「使い方によってはスペック以下になってしまう」です。受動プローブには、15cmくらいのワニ口付きのグランド・リードが付属しています。信号に接続する場合、このワニ口グランド・リードを使用しますが、これがくせ者です。
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