絶縁機能を搭載したA-D変換器ICと、それに組み合わせて使う電力量計ICを用意した。電流の検出素子として電流トランスの代わりにシャント抵抗を利用でき、システム全体のコストとサイズを低減できるという。
アナログ・デバイセズは2012年10月、電力量計に向けて絶縁機能を内蔵した電圧・電流計測用A-D変換器IC群を発売した。コイルを使った磁気結合方式の独自技術「iCoupler」で絶縁を確保しており、検出した値をデジタルデータに変換した上で、絶縁バリアを超えて2次側に出力することが可能だ。そのデジタルデータを元に有効電力と無効電力、皮相電力の他、THD(総合高調波歪み率)などの電力品質の評価パラメータを算出する機能を備えた3相の電力量計測ICも用意した。
両者をチップセットとして組み合わせて使えば、絶縁下での電流検出素子として一般的な電流トランス(CT)をシャント抵抗に置き換えられるという。同社によると、CTは磁気耐性が低いため外部磁界の影響を受けやすく、電流の検出値が不正確になる危険性があり、誤動作対策が必要だった。さらに、高コストな上にサイズも重量も大きかった。これに対しシャント抵抗の両端の電位差を検出する方式なら、磁界の影響はほぼ無視できる。iCoupler自体も強磁性の材料を用いていないため、高い磁気耐性が得られるという。その結果、電流・電圧計測のシステム全体のコストとサイズを低減できると説明する。
絶縁機能内蔵のA-D変換器ICは2品種あり、集積するA-D変換器のチャネル数が異なる。電流計測用に1チャネル、電圧計測用に2チャネルを搭載した「ADE7933」と、各1チャネルずつを内蔵した「ADE7932」である。いずれの品種も、A-D変換器のアーキテクチャはΔΣ型、分解能は24ビット。iCouplerを応用した絶縁型DC-DCコンバータ技術「isoPower」も採用しており、2次側から1次側(電圧・電流の検出側)に電力を供給する機能も備える。
20端子で横幅が標準品よりも広いSOICパッケージに封止した。絶縁特性に関わる空間距離と沿面距離については、ともに8mm以上を確保している。5kV/分の絶縁電圧で、50年以上の製品寿命を確保したとする。価格はADE7933が5.71米ドル、ADE7932が5.42米ドル(いずれも1000個購入時の単価)。3相の電力量計測IC「ADE7978」は、28端子LFCSP封止で価格は1.9米ドルである。
同社はこの他、2次側のデジタルインタフェースにSPI形式を採用した絶縁機能内蔵A-D変換器ICで、電力量計測ICの代わりに汎用マイコンなどを組み合わせて使う用途に向けた2品種も併せて発売した。電流計測用に1チャネル、電圧計測用に2チャネルを搭載した「ADE7913」と、各1チャネルずつを内蔵した「ADE7912」である。
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