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スマートメーター向けシステムLSI、計測と通信、セキュリティの機能を統合Maxim Integrated Zeus

Maximの「Zeus」は、スマートメーターに必要な機能をまとめて集積したシステムLSIである。電力計測の機能とネットワーク通信機能を備えた他、高度なセキュリティ機能も搭載した。スマートメーターを構成する部品点数を減らせる。

» 2012年10月25日 15時28分 公開
[薩川格広,EDN Japan]

 Maxim Integrated Productsは2012年10月、スマートメーターに必要な機能をまとめて集積したシステムLSI「Zeus」を発表した。具体的には、電力計測に向けて、アナログフロントエンド回路と、デジタル演算信号処理を担うマイコンコアとDSPブロックを内蔵した他、アプリケーションソフトウェアの処理に使えるARMのCortex-M3コアを集積。さらに、通信用のベースバンド処理回路も搭載する。盗電や電力網へのサイバー攻撃に備え、複数階層にわたる高度なセキュリティ機能を実装したことも特長だ。2013年第1四半期にサンプル出荷を開始する予定である。

左はZeusの機能ブロック図である。右は、スマートメーターの構成方法の変遷を時系列で示した。旧来(Yesterday)は計測用の(1)アナログフロントエンドと(2)プロセッサ、(3)通信/アプリケーション処理用マイコン、(4)通信用トランシーバの4チップ構成が使われていた。現在(Today)では、(1)と(2)が1チップ化されているが、セキュリティ機能を実現するためのコプロセッサが必要になっており、全体では4チップ構成のままである。今後(Tomorrow)は、Zeusを採用することで、これを2チップに削減できるという。出典:Maxim Integrated Products (クリックで画像を拡大)

 アナログフロントエンドには、電力の演算に向けた電圧と電流の測定に対応するA-D変換器を最大7チャネル搭載した。分解能は24ビット、サンプリング速度は10kサンプル/秒。ダイナミックレンジは5000:1を確保した。0.1%の精度で電力を求めることができるという。

 アプリケーション処理を担うCortex-M3コアは動作周波数が120MHzと高い。「現時点だけではく、将来に必要になる高度なアプリケーションにも対応できるように、動作周波数に十分な余裕を持たせた」(マキシム・ジャパン)。さらに、ソフトウェア格納用のフラッシュメモリを最大1Mバイト、データ保持用のSRAMを最大128Kバイト集積しており、「競合他社が供給するスマートメーター向けLSIに比べて、容量が桁違いに大きい」(同社)と主張する。

 セキュリティ機能については、通信データを保護する暗号化エンジンと、ファームウェアの不正な変更を防ぐセキュアブートローダーを備える他、物理的な手段による不正なアクセスを検出・記録し、必要に応じてチップ上のデータを消去したりする耐タンパー機能を組み込んだ。「外部端子経由の不正アクセスはもちろん、パッケージの内部にも対策を施してある。金属メッシュが張ってあり、電源が供給された状態でそこにプローブが当たると、内部フラッシュメモリを消去してセキュリティを守る」(同社)。

左はスマートメーターのセキュリティが侵される危険性がある場面、右はそれらへの対策としてZeusが備える機能である。出典:Maxim Integrated Products (クリックで画像を拡大)

 集積するアナログフロントエンドのチャネル数やメモリの容量が異なる複数の品種を用意した。型名は「MAX71616」、「MAX71617」、「MAX71636」、「MAX71637」。各品種の仕様については要問合せ。パッケージは120端子LQFPである。

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