デジタル電源制御はアナログ電源に比べて、入力ラインや負荷の変化に適応する上でのフレキシビリティが格段に優れる。デジタル電源では、電源動作条件の変化に応じて制御パラメータを変化させることが可能だからだ。このような具体例を図2に示す。
同期整流式降圧電源では、ハイサイドとローサイドのMOSFETが同時に導通することがないよう動作する。この動作は、MOSFETの一方がオフされてから、もう一方がオンするまでの時間である「デッドタイム」を規定することにより保証される。デジタル電源制御であれば、デッドタイムは一定である必要がなく、電源効率が最適になるよう動作条件に応じてデジタル制御ループを介して調整される。この技術は図2に比較を示すように、特に、低負荷時に効果が大きい。
アナログ電源制御では、フィードバックループの補償は安定性とダイナミック応答特性とのバランスを取った1つの「妥協点」になる。
デジタル電源制御ならば、非線形、つまり適応型の制御ループが構成可能であり、これにより動作条件の関数として補償条件を調整できる。言い換えれば、電源は必要な時には高速に応答し、その他の場合にはゆっくりと応答することになる。
図3に、このような適応動作の実例を示す。このアプローチでは、ダイナミック応答特性の改善に加えて、電源システムとしてのいくつかの利点を生む。電圧変動を許容値内に収めるに必要な出力デカップリング・コンデンサが少なくて済み、コストと部品実装面積が節約される。非線形制御により、ダイナミック応答特性を損なうという問題を起こすことなく、不連続モードでの電源動作が可能になる。
ここまでに説明したような数々の利点を持つことからデジタル電源制御は、新しく設計される電源に、徐々に導入されるケースが増えてきている。電源に組み込まれるデジタル制御回路の中には、システム電源管理として使用できるものがあり、この点が付加的な利点となる。こうしたことから、次に説明する電源管理用ハードウェア要素の多くは、システム設計者が注意すれば、コストをかけずに“無償”での使用が可能となる。
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