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デジタル電源再入門電源設計(1/4 ページ)

ユーザーにとって最良の電源とは一体、何なのだろうか――。新しい“スマートな電源”として広く知られるようになった「デジタル電源」。しかし、アナログ電源をしのぐまで普及していない。いま一度、デジタル電源の仕組み、利点を見直し、これからの電源を考えてほしい。

» 2013年07月01日 10時00分 公開
[Steve Taranovich,EDN]

電源制御とは

 まず、古典的なアナログ電源の制御ループを図1の左上に示す。パルス幅変調(PWM)制御ICが主制御素子として使用される。電源出力電圧が抵抗分圧回路によりサンプリングされ、その電圧とDC基準電圧が誤差増幅回路において比較される。

 PWM制御は、誤差増幅器回路出力を利用して電源スイッチの“オン時間“を制御する。

 PWM制御ICには、ダイナミック応答特性と安定性とを適切にバランスさせるためのループ補償用として、固定抵抗とコンデンサから構成される回路が外付けされる。

 その他の2つの主要な電源構成部分が入力と出力のフィルタ回路だ。これらの部分は、インダクタ、コンデンサおよび抵抗からなり、いくつかの機能が構成される。入力フィルタは、過渡的な入力電圧に対して電源を保護するよう働くとともに、負荷がダイナミックに変動する際の電源動作に備えて適量のエネルギーを蓄積する。同時に、電源入力ラインへの導電性ノイズの規格に準拠するためのフィルタ機能も含んでいる。

 出力フィルタは、リップルとノイズが規格を満足するよう出力電圧を平滑化し、負荷回路からのダイナミックな電流要求に応えられるようエネルギーを蓄積する機能を持つ。入力用および出力用のフィルタと電力素子は、アナログ電源あるいはデジタル電源のいずれの制御方式でも実質的には同じ役割を果たす。

【図1】アナログ電源(左上)およびデジタル電源(右上)の制御システムと電力伝達回路部 (クリックで拡大)

 図1の右上には、デジタル式の典型的な電源制御システムの構成を示した。

 デジタル電源でも出力電圧の計測(センシング)は、アナログ電源設計とほぼ同じである。ただ、検出されたアナログ電圧信号は、誤差増幅器にではなくA-Dコンバータに入り、2値信号(バイナリデータ)に変換される。A-Dコンバータから出力されるデジタルデータはマイクロコントローラ(MCU)に送られ、処理される。MCUにおける制御処理のアルゴリズムは、回路基板に実装されたROMに格納されている。

 そのアルゴリズムによりMCUがA-Dコンバータからのデジタル出力に対し一連の計算処理を行う。そうした計算処理の結果として、誤り信号、ドライバ駆動パルスの所要幅、各ドライバ駆動パルスに対する最適遅延量、ループ補償用パラメータなどが得られる。アナログ電源に利用される外付けのループ補償素子は不要だ。

 出力電圧や出力電流、温度などのパラメータの値は、不揮発性メモリであるEEPROMに製造時または通信用バスを経由して電気的に書き込まれる。EEPROMに格納されたデータは、システム起動時にRAM(ランダム・アクセスメモリ)に読み込まれ、そのデータによりMCUが読み書き動作を進める。

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