デジタル電源管理によって、電源および電源システムのライフサイクルのさまざまな場面で、いくつかの恩恵とチャンスが得られる。その多くは、「フレキシビリティ」というデジタル電源の特徴から生まれる。つまり、電源システムの設計者は、状況に応じて、重要な機能や性能だけを選択して利用できるのだ。
【デジタル電源による恩恵】
デジタル電源管理システムの基本的なアーキテクチャでは、図4に示すように、電源がデジタル通信バスを経由して電源システムの中央ホストコントローラと通信する。
電源としては、DC-DCコンバータやPOL(point of load)レギュレータなどがある。コントロール用デバイスには以下のような多くの形式がある。
ホストデバイスは1枚のシステムボードから構成される制御ドメイン(領域)を持ち、大規模システムの場合は、このホストは高位のシステムレベル・コントローラと必要に応じて通信する。システム電源制御は、通常の回路基板上に組み込まれる電圧レベルの数が増加すると、複雑になる。電圧のシーケンス制御が複雑化するからだ。
通常の起動や遮断の動作時と、一定の異常条件での動作時の両方に対し、シーケンス順位、立ち上がり時間、遅延時間を制御する必要がある。こうしたことはデジタル管理ならば単純なことであり、アナログ制御素子やタイミング用部品のはんだ付けを伴う取付けに頼る必要がない。
電圧調整(マージニング)が電源制御に対するデジタル管理の効能のもう一つの例だ。この機能は、製造の最終段階で機器の堅ろう性を実証するために利用される。構成にもよるが、電圧は±5%ほど調整される。この調整は、デジタル通信バスを利用することにより、余分のハードウェアや接続を要することなしに、1秒以内の短時間で完了する。
コンフィギュレーション機能に対する一般的な要求条件は、異常判定の条件をプログラムできることだ。デジタル・バスの利用により、次のようなフレキシブルさが得られる。
モニタリング機能には、入力や出力の電圧と電流、動作周波数、電源内部の温度などのパラメータを計測する機能が含まれる。この機能は、ほとんどの電子機器メーカーにとって、新規システムを設計、評価する段階で最も利用価値の高いものとなっている。
デジタル・モニタリングでは、こうした計測が熱電対、リード線のはんだ付け、部品交換などを要することなく、PCを利用して実現できる。この段階でパラメトリックな情報を取得することにより、電源システムの最適化あるいは最もコスト効率の高い電源の選択が可能となる。
ハイエンド・システムあるいは高稼働率システムの設計では、この種の機能を最終製品に組み込み、システム動作中にパラメトリックなデータを集積できるようにすることが望まれる。このようなアプローチにより実現される例を以下に挙げる。
ほとんどのユーザーには、このように複雑に設計された機能は利用する必要がない。中間的なアプローチでは割込み駆動方式の設計が利用される。
この場合、ホストコントローラはパラメトリックデータを定常的にモニタリングすることはなく、電源に問題が生じたときに電源から通知されるだけだ。それに対応して、ホストは電源の障害モードに応じて必要な処置を実行する。
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