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ATX電源の修理 〜2台目〜Wired, Weird(2/3 ページ)

» 2014年01月15日 08時00分 公開
[山平豊内外テック]

破損部品の交換から着手

 まずは基板をクリーニングして、ダイオードとジャンパー線を配線して、プラコンを実装し、断線していたヒューズも交換した。

 AC100V電源を印加する前にAC電源の整流回路を確認してみた。マルチメータで確認したら、ヒューズやダイオードブリッジは正常に動作した。またAC端子の抵抗値は数100KΩあり短絡はしていない。次にDC12V程度の電圧をAC端子に供給し一次側のコンデンサの端子電圧を確認した。DC10V程度の電圧があり、極性を変えても同じだった。整流回路は正常に動作していて、AC100Vの電圧を供給しても大丈夫そうだ。

倍電圧整流回路は正常

 通電で焼損する可能性もあり手元スイッチを通して電源にAC100Vを供給した。通電後に一次側のコンデンサの電圧を確認したら、DC280Vあった。倍電圧整流回路は正常に動作していた。しかし、ファンは回転せず、2次側にDC電圧は出力されない。他にも壊れている部品があるようだ。

 これからが修理の正念場である。参考回路図にある電源の制御ICのTL494は修理基板にも搭載されていたが、TL494に電源が届いていない。参考回路図では制御用の予備電源をT6のRCC電源で作っていたが、この回路に相当する部品は修理基板には実装されていなかった。2次側に通電して調べれば分かるかもしれないが、部品の実装密度が高く他の部品も破損する恐れもあり危険である。

発想を転換!

 ついに修理作業が先に進まなくなった。ここで発想を転換した。つまり部品の破損状況から故障原因を類推し、破損する可能性がある部品を回路図から特定し、その部品を単品で確認する方法へ変更した。

 外から見えた故障状況はヒューズが切れて、プラコンが焼損していた。ヒューズが切れたのは電源の一次側に過電流が流れたためである。プラコンはなぜ焼損したのか? 部品の耐圧は250Vあり正常動作ではDC140V程度がかかるが電圧マージンは十分である。これが焼損するには耐圧を大きく超えた電圧が印加されたことが予想される。また、この電源にはAC100VとAC200Vの自動切り替え回路がある。

見えてきた焼損原因

 これらの要因を組み合わせて考えるとプラコンの焼損原因が見えてきた。つまり、耐圧を超えた電圧がプラコンに印加された可能性が高い。そうなるにはAC230Vが印加された時に倍電圧整流回路が動作し、DC560Vが印加されてしまった可能性が高い。その結果、プラコンにDC280Vが印加されリーク電流が大きくなって過電力でプラコンが焼損したと推定できる。

 この動作は、図4の回路図のトランジスタQ1かQ2がオンしっぱなしになれば、起こり得る。つまりQ1もしくはQ2相当の部品が短絡破損している可能性が高い。回路パターンを追いかけたら、放熱板に実装された2つのトランジスタが見つかった。このトランジスタは同一形名だった。つまり図4のQ1とQ2に相当するトランジスタにほぼ間違いない。

 トランジスタを放熱板ごと取り外して、単品で動作を確認した。トランジスタと放熱版を取り外した基板の写真を図5に示す。

【図5】トランジスタと放熱版を取り外した基板

 図5から焼損したプラコンの反対側にあったトランジスタの基板の表面が少し焼けているのが分かった。このトランジスタが短絡して加熱した可能性が高い。トランジスタを外して、単品で抵抗を確認したらC-E間が200Ω程度で短絡破損していた。もう一方のトランジスタはオープンで正常だった。

 該当するトランジスタのデータシートをWebで調べメーカーの在庫を確認したが、既に製造中止していた。相当するトランジスタを耐圧、電流、電力、パッケージの条件で調べて選定し部品を手配した。国内には代替え部品の在庫は無く海外在庫を手配したため入手に10日間ほどかかった。入手したトランジスタを放熱板に固定し、基板にハンダ付けした。

 念のため手元スイッチを通してAC100を通電したらファンが回転し、正常にDC電圧が出力された。ただし、5V電源が少し高めだったので、基板上のボリュームで電圧を下げた。

 この時にファンの音がかなり静かなことに気が付いた。1台目のATX電源修理では起動時に少し異音が出たが、30秒程度で異音はなくなった。それに比べると2台目は非常に静かである。つまり2台目のATX電源の通電時間はかなり短かかったようだ。

 この電源のAC電圧自動切り替え基板のコネクタもしっかり圧着しパターンを補強した。電源のケースに入れて、AC100Vを通電して、ファンの動作と各DC出力の電圧を確認しすべて正常な電圧だった。これで修理は完了し、修理依頼主へ返却してAC200Vでの動作の確認を依頼した。

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