今回は、キセノンランプ点灯電源の修理で経験した高圧回路で陥りやすい失敗例を紹介する。高圧回路は、ちょっと油断するだけで、すぐに放電、感電してしまう危険が潜む。細心の注意を払う必要がある。
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修理の依頼はAC/DC電源やアナログ基板の低電圧回路に関する内容が多く、高電圧回路にはあまり縁がない。そんな中、初めてキセノンランプの点灯回路(イグナイタ)の修理の打診があった。あまり自信はなかったが簡単な基板だったので修理依頼を受けた。
修理品の基板をよくよく調べたら非常に面白い回路だった上、回路上の不具合も多数あった。今回はこのキセノンランプ点灯電源の修理で気づいたことを報告する。
まずはキセノンランプの点灯動作について説明しよう。
キセノンランプはキセノンガスを封入した放電灯で高エネルギーのランプだ。身近な例では自動車に使用されるHID(High Intensity Discharge lamp)ランプもキセノンランプだ。キセノンランプは放電灯で高電圧を印加するとランプの電極が放電し、ランプが点灯する。点灯後は低電圧でランプの点灯が維持される。
当初、修理依頼主からの不具合情報は「ランプが点灯しない」ということだけで、回路図や説明資料もなかった。その後に少しずつ情報が入り製品の名称は”イグナイタ”と判明。さらに供給電源は、点灯前はDC100V程度の電圧を出力し、点灯後は電圧をDC数十Vに落とすことで大きな電流を供給してランプの点灯を維持させるという情報を得た。
修理品を入手し早速ボックスを開けて基板をみたら、簡単な回路だった。パターンを追いかけて、回路図を作った。図1に示す。
図1の回路構成の概要を説明する。
コックフォルトン回路は高電圧を発生させる著名な回路だ。この回路は読者も勉強して理解してほしい。交流電源のマイナス側、プラス側の電源が繰り返し交互にコンデンサに充電され、入力電源の約10倍のDC電源が生成されるように動作する回路だ。
図1の回路図からイグナイタの故障の原因を推察してみた。
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