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絶縁距離は十分ですか? 高圧回路に潜むワナWired, Weird(1/2 ページ)

今回は、キセノンランプ点灯電源の修理で経験した高圧回路で陥りやすい失敗例を紹介する。高圧回路は、ちょっと油断するだけで、すぐに放電、感電してしまう危険が潜む。細心の注意を払う必要がある。

» 2014年05月14日 09時00分 公開
[山平豊内外テック]

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 修理の依頼はAC/DC電源やアナログ基板の低電圧回路に関する内容が多く、高電圧回路にはあまり縁がない。そんな中、初めてキセノンランプの点灯回路(イグナイタ)の修理の打診があった。あまり自信はなかったが簡単な基板だったので修理依頼を受けた。

 修理品の基板をよくよく調べたら非常に面白い回路だった上、回路上の不具合も多数あった。今回はこのキセノンランプ点灯電源の修理で気づいたことを報告する。


キセノンランプの動作原理

 まずはキセノンランプの点灯動作について説明しよう。

 キセノンランプはキセノンガスを封入した放電灯で高エネルギーのランプだ。身近な例では自動車に使用されるHID(High Intensity Discharge lamp)ランプもキセノンランプだ。キセノンランプは放電灯で高電圧を印加するとランプの電極が放電し、ランプが点灯する。点灯後は低電圧でランプの点灯が維持される。

修理品の回路構成

 当初、修理依頼主からの不具合情報は「ランプが点灯しない」ということだけで、回路図や説明資料もなかった。その後に少しずつ情報が入り製品の名称は”イグナイタ”と判明。さらに供給電源は、点灯前はDC100V程度の電圧を出力し、点灯後は電圧をDC数十Vに落とすことで大きな電流を供給してランプの点灯を維持させるという情報を得た。

 修理品を入手し早速ボックスを開けて基板をみたら、簡単な回路だった。パターンを追いかけて、回路図を作った。図1に示す。

【図1】修理品の回路図

 図1の回路構成の概要を説明する。

  • 電源入力部
    • DC100Vの電源を33Vのツェナーダイオード2個を通して、DC34Vに電圧低下させる。
    • この電源をレギュレータ7824を通して、インバータ部へ安定したDC24Vを供給する。
  • インバータ部
    • 市販のインバータが使用されていた。DC24Vを入力し33KHZのAC1000Vの電源が生成されていた。この部品はLCDのバックライトの点灯用の電源だった。
  • 昇圧部
    • ケースに入れてあり文字通りブラックボックスになっていた。ケースを開封し確認したらダイオードとコンデンサの基板だった。これは、コックフォルトン回路で入力の交流電圧を10倍の直流電圧に整流する回路で、この基板では10KVの高電圧を生成していた。回路図を図2に示す。
【図2】コックフォルトン回路

 コックフォルトン回路は高電圧を発生させる著名な回路だ。この回路は読者も勉強して理解してほしい。交流電源のマイナス側、プラス側の電源が繰り返し交互にコンデンサに充電され、入力電源の約10倍のDC電源が生成されるように動作する回路だ。

想定される故障原因

 図1の回路図からイグナイタの故障の原因を推察してみた。

  • 昇圧部(ブラックボックス)の劣化
    • 出力を開放にして通電すると昇圧部の出力が過大になり気中放電する。放電時に内部回路や周囲回路の部品を破損させた。
  • 入力部品の発熱による劣化
    • DC100VをDC34Vに電圧降下させるツェナーダイオードが加熱して部品が劣化した。放電時に0.1A程度の電流が流れるが、電力に換算すると64V×0.1A=6.4Wで大きな電力を消費するのでツェナーダイオードが破損した。また電力部品の熱で基板が焼け、パターンが断線した。
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