図1でサイリスタは電流で保持すると説明したがその意味をサイリスタの構造から説明する。サイリスタSCRはPNPN素子であるがPNPとNPNの2つのトランジスタに分けて考えるとラッチ動作が分かりやすい。図3にイメージ図を示す。
最初、ゲートに電圧がかかっていない状態では、SCRの2つのトランジスタはオフになっている。そこでゲートに約0.8Vの電圧を印加すると、下側のNPNトランジスタがオンする。このコレクタが上側のPNPトランジスタのベースに接続されており、上側のトランジスタのベース電流が流れる。すると上側のPNPトランジスタもオンして、そのコレクタが下のNPNトランジスタのベースに接続されており、下のトランジスタのベース電流が流れる。この状態でゲート電圧を取り払ってもオン状態が保持される。2つのトランジスタがお互いのコレクタから他方のベース電流を流すことでラッチ(自己保持)が行われている。
サイリスタの自己保持を解くにはどうしたら良いだろうか。これには2つ方法がある。1つは図1のSCRに電流を流さなくする方法で、もう1つはゲートに負電圧を印加する方法だ。後者のリセット方法を用いたSCRの2端子ラッチ回路例を図4に示す。
図4の回路は負荷のLEDが回路内に含まれている2端子ラッチ回路で、SCRのゲートに負電圧を印加することでラッチを解く方法である。セットスイッチ(SW1)を押すとSCRがオンし、ラッチしてLEDに電流が流れLEDが点灯する。LEDは点灯している時に順電圧は2V程度ある。リセットスイッチ(SW2)はゲートとLEDのカソード側に接続してあり、SW2を押すとカソードから見るとゲートに約−2V(LEDの電圧)が印加されSCRがオフしてラッチが解ける。なおこの回路ではSW2を押した瞬間にラッチが解除されLEDは消灯する。
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