サイリスタは古い素子であり、年配者にはなじみが深いが、若い人にはなじみが薄い。またサイリスタを使う人が少なく、A電子では50円で販売しているがこれ以上値段は下がらないだろう。サイリスタ以外の方法でもっと手軽に、安価に2端子ラッチ回路を組むことはできないか?
いろいろ考えた末にフォトカプラを使う方法にたどり着いた。もともとフォトカプラはLEDの光で信号を伝達する絶縁素子であるがこれをラッチ回路に使った。フォトカプラを使ったのラッチ回路の例を図5に示す。
図5の回路動作を簡単に説明しよう。この回路はフォトカプラの中にあるLEDとフォトトランジスタPTを直列に接続し、リセットスイッチ(SW2)とセットスイッチ(SW1)をLEDとPTに並列に接続した。下側のセットスイッチ(SW1)を押すとフォトカプラのLEDに電流が流れて点灯し、負荷のLED D1も点灯する。このときフォトカプラのLEDの光でフォトカプラのPTもオンする。このためセットスイッチSW1をオフにしてもLED D1は点灯したままになる。この状態で上側のリセットスイッチ(SW2)を押すとフォトカプラのLEDの両端は短絡されてLEDは消灯してPTもオフになり、ラッチが解けてLED D1も消灯する。
なお、この回路が動作するかどうかはフォトカプラの電気的特性に左右される。つまりフォトカプラのLEDに流れる電流をPTが流す能力があるかどうかが鍵だ。その特性とはCTR(Current Transfer Rate)電流伝達係数である。CTR100%未満では自己保持できず100%以上では自己保持可能である。
逆に、フォトカプラのCTRが100%以上であるかどうかをこの回路で判定することができる。また図5のR1を可変抵抗にすると、フォトカプラに流す電流でCTRが変わることも分かる。ラッチした状態で抵抗値を大きくしていくとLED D1が徐々に薄くなるが、更に抵抗値を大きくするとLED D1が消えてラッチが解ける。つまりフォトカプラはLEDの電流が少ない時はCTRも小さくなることが分かる。このフォトカプラを使ったラッチ回路では、電流を多めに流した方が安定してラッチが動作できる。
なお実際の回路ではノイズで誤動作しやすいので、1000PF程度のコンデンサを付加する。セットスイッチと並列にコンデンサを入れれば、パワーオンセットになり、リセットスイッチと並列にコンデンサを入れれば、パワーオンリセットになる。フォトカプラでラッチ回路を構成するメリットはこの点にもあった。
新しい回路を設計して動作確認すると、思うように動作しないことが多々ある。このフォトカプラでのラッチ動作もその1つだ。実際に試作した時は、5V電源ではラッチ動作せず、12Vでは安定してラッチ動作した。フォトカプラのデータシートには記載されているが、その原因を探っていくうちにフォトカプラは電流が少ないとCTRが低く電流が増加するとCTRが大きくなることも分かった。
今回は2端子ラッチ回路を紹介したが、機能回路を設計し、製作した基板の調整を行うことで、より深く各機能素子の特性を理解できる機会を得ることができた。
今回の2端子ラッチ回路の名前はシリアルラッチとする。今までにシリアルオシレータやシリアルタイマーの3つの2端子機能回路を紹介したが、2端子機能回路を組み合わせることでもいろいろな応用ができる。次回は2端子回路の合わせ技についても紹介していく予定だ。
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