USB Power Delivery(USB PD)をご存じでしょうか? 100Wまでの給電を全てUSBケーブルで行ってしまうという新しいUSB規格。既にUSB PDの仕組みを搭載したPCも発売されています。ここでは、あらゆる機器の給電スタイルを一新する可能性のあるUSB PDがどのような規格で、どんなことができるかなどを解説していきます。
「100Wまでの給電をUSBケーブル上で行う」という壮大なミッションを背負う規格をご存じでしょうか? それがUSB Power Delivery(USB パワーデリバリ/以下、USB PD)です。USB Type-Cと呼ばれる次世代コネクタとセットで使うことで、100Wの給電だけでなく、DisplayPortやMHLといった通信規格もUSBケーブル上で通信できるようになります。2015年に発売された一部のノートPCには、既にUSB PDの仕組みが入っています。この仕組みを使ってType-CケーブルでACアダプタからPC本体へ給電を行い、DisplayPortやHDMI、VGAの信号をType-Cケーブルにのせています。これから続々とUSB PDを使う製品が出てくることを考えると、2015年はまさにUSB PD元年と呼ぶのにふさわしい年になることでしょう。
本稿では、USB PDが今後どのように普及していくのか、その普及の先にどんな世界が見えるのかについてお話します。さらに、USB PDを実現するために不可欠なType-CコネクタとUSB PDコントローラについても説明します。
現在、PCやACアダプタでUSB PDの仕組みを搭載した製品が発売されています。また、USB PDの仕組みは非対応ながらType-Cのみを載せたタブレット、スマートフォン、HDDの製品発表も相次いでいます。アメリカの調査会社のStrategy Analyticsは、「2016年にType-Cを搭載したモバイル機器の比率が12%になる」と予測しています。この予測が正しければ、2016年には数億台のモバイル機器がType-Cを搭載することになるのです。
筆者は次の流れでUSB PDの普及が進んでいくと予測しています。
まず、PCとモバイル機器を中心とした製品では、既に普及が始まりつつあります。その次にテレビやモニターのような映像機器とそれにつながる製品グループで普及が始まるのではないでしょうか。その後にはプロジェクタやプリンタのようなビジネス用途で使用する機器や、カーオーディオやカーナビゲーションなどの車に搭載される機器にまで、USB PDが広がっていくでしょう(図1)。これから数年のうちに、あらゆる機器がUSBケーブルでつながり、給電を行いながら高速にデータを通信することが当たり前になるかもしれません。
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