USB PDは、USB-IF(USB Implementers Forum)が策定した規格です。この規格で、一体どんなことが決められているのでしょうか。ポイントは次の3つです(図2)。
1つはUSBケーブルで最大100Wの電力供給が可能になることです。USB PD以前は、USB BC1.2(USB Battery Charging Specification rev1.2)でサポートしている7.5W(5V-1.5A)がUSBケーブルで供給できる最大の電力でした。USB PDは、5Vに固定されていた電圧の制約をなくすことで、20V-5Aで100Wの電力供給を可能にしているのです。
2つ目のポイントは、電力とUSBデータの役割をそれぞれスワップ(ロール・スワップ)できることです。電力の場合、供給側(Source:ソース)と受給側(Sink:シンク)をスワップできます。例えば、モニターとPCをUSBケーブルでつなぐ場合、モニターからPCを給電するだけでなく、ロール・スワップを行うことでPCからモニターを給電することも可能になるのです。データの場合は、USBホストとデバイスの関係をスワップすることができます。
最後、3つ目のポイントは、DisplayPortやHDMIといった通信規格をUSBケーブル上で伝送可能になることです。例えば、PCに保存した映像をDisplayPortの通信でモニターに出力することが、USBケーブルさえあればできてしまうのです。
今後、電子機器がType-CやUSB PDを搭載していくことで、どのようなトレンドが生まれるのでしょうか。筆者は、次の3つのトレンドが生まれると考えています(図3)。
1つ目が、ACアダプタの汎用化です。私たちの身の回りには、PC向けのACアダプタから、ゲーム機やモバイル機器向けなど、たくさんのACアダプタであふれています。これらACアダプタの多くは、本体の製品の買い替えサイクルに合わせて使われなくなる傾向にあります。USB PDは、100Wまでの給電をUSBケーブルで実現しますので、極端にいえば、テレビからPC、タブレットやスマートフォンまで何でも給電する究極の汎用ACアダプタが実現できます。そこまでいかなくても、60W以下や36W以下の機器なら何でも給電できてしまう、そんな汎用ACアダプタが登場しても不思議ではありません。ACアダプタの汎用化が進むことで、製品を買い替えるごとに不要になるACアダプタが減少し、環境の面でも貢献していくのではないでしょうか。
2つ目が、USBケーブルのマルチユース化です。今までは、ACアダプタ用のケーブル、USBやDisplayPort、HDMIといった通信規格に応じた専用ケーブルが必要でした。今では、個人で何種類ものケーブルを所有するのが当たり前になっています。しかし、こういった状況はUSB PDの登場で一変するでしょう。電力の給電から、USB通信、DisplayPortやHDMIといったデジタル通信まで、USBケーブル1本でできてしまうからです。そして、この何でもこなすUSBケーブルが、コネクタの統一化も進めていき、「機器に搭載されるコネクタはUSB Type-Cだけ」といった状況になるのではないでしょうか。
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