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小電流電源の試験に適した定電流負荷Design Ideas 計測とテスト

市販の電子負荷機器の多くは、電流値が少ないスイッチ電源の試験において精度面で問題が生じる場合がある。今回は、この問題に対する解決策の一案として、定電流負荷回路を紹介する。

» 2016年01月04日 11時30分 公開

 洗濯機や乾燥機あるいは暖房機などの家電製品では、小型/軽量という利点から、従来のリニア電源に取って代わってスイッチング電源が使用されるようになった。このような用途に用いられるスイッチング電源の出力電流容量は50mA〜1A程度の範囲にある。その試験には、抵抗負荷や標準的な電子負荷機器が一般的に用いられる。抵抗負荷を使用する場合には、各種電力規格に対応したいくつもの抵抗を使い分けなければならない。

 一方、市販の電子負荷機器の多くは、平均電力が300Wのものに限られる。試験時の電流計測も、50mA〜300mAの計測では表示値の精度に問題がある。表示分解能が100mAといったものが多いため、電流値が少ない場合、精度面で問題が生じてしまうのだ。本稿では、このような問題に対する解決策の一案として、定電流負荷回路を紹介する。

低価格の汎用部品で構成可能

 図1に示したのは、2チャンネルの定電流負荷として機能する回路である。低価格の汎用部品で構成できる点が特徴の1つだ。2つのチャンネルは同一の構成なので、以下、チャンネルAを例にその動作を説明する。

図1:2チャンネルの定電流負荷 (クリックで拡大)

 この回路では、Q1のMOS FETと1Ωのセンス抵抗R6を経由して負荷電流(試験の対象とするスイッチング電源からの電流)が流れる。R6による電圧降下分がIC1Aの2番端子への入力となり、基準電圧と比較される。IC1Aはデュアルオペアンプ「LM358」であり、2番端子と3番端子の入力を比較して、その結果に対応した電圧を出力する。IC1Aの3番端子に入力する基準電圧は、基準電圧源「TS431」の出力電圧である1.25Vを2個のポテンショメーターR2、R3によって分圧したものとなる。基準電圧の最大値が1.25V、R6が1Ωであることから、各チャンネルの最大電流は1.25Aになる。

 R2、R3はそれぞれ1kΩのポテンショメーターである。基準電圧の微調整が容易に行えるよう15回転型のものを用いるとよい。これらのポテンショメーターの一方によって負荷電流の最小値を、他方によって最大値を設定する。単極3投のスイッチS1により、最小電流、最大電流、無負荷状態を切り替えられるようにしている。

 なお、抵抗R6の端子間にデジタル電圧計を接続すれば、電流値を計測しながら最大電流/最小電流を微調整できる。その際の計測値は、R6に流れる電流による電圧降下に対応するため、入力電圧が変化しても影響が及ばない。

 回路の電源としては9Vの電池を使用する。設定可能な電流範囲は0A〜1.25A、許容入力電圧範囲は3V〜50Vである。最大入力電圧はコンデンサC1とQ1の耐圧によって決まる。2つのチャンネルの入力を並列に接続すれば最大電流が2.5Aのスイッチング電源にも対応できる。デュアル出力型のスイッチング電源を試験する際には、各チャンネルの最大電流と最小電流とをデジタル電圧計で計測しながら正確に調整する。それにより、最大電流時、最小電流時、無負荷時の試験をマトリックス的に効率良く進めることができる。

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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。

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